グランフィールの取付け(ヤマハW-106)

ヤマハW-106
「アップライトピアノにグランドピアノの”あの”響きをタッチを」で
大変好評頂いております「グランフィール」
今回はヤマハの W-106 に取付けました。

ピアノのオーナーさんは
私のところで半年に一度調律しておられる
JAZZ が大変上手い大人の女性です。(クラシックもお弾きになります)
ミシェル・ペトルチアーニあたりを弾きはじめると
こちらも一瞬で演奏に引き込まれてしまいます。

ピアノのアクションにグランフィールパーツを取付ける為
しばらくの間、アクションをお預かりさせて頂きます。

グランフィール取付キット
お馴染みのグランフィール取付キット。
アップライトピアノをグランド化する為に必要な
レペティションスプリング等
必要なパーツが一式入ってます。

ダンパーストップレール
既存のダンパーストップレールに対して
「ショット&ドロップスプリング」を取付ける訳ですが
この年式のヤマハのレールは
既にコストダウンにより
堅木ではなくラワンが採用されています。
スカスカの木材だとネジがしっかり効きませんので
アルミのアングルで補強します。
これにより部品がしっかり固定出来るのと
季節変化の影響を受けなくなるので
長期に渡り安定してお使い頂けるようになります。

レール加工
レギュレチングレールとダンパーストップレールを下加工し
レペティションスプリングとショット&ドロップスプリングを
取付けます。

バット加工
ハンマーバット加工。
グランフィールはアップライトとグランドで
条件の違うところは出来る限り
グランドと条件を揃える徹底ぶりです。

ハンマー加工
ハンマーヘッドもしっかり手を入れておきます。
理想とするグランドサウンドが出るように
針の下入れ、形状を整形、ハンマージュース、コテ等を使い
豊富な倍音が出る様にしておきます。

レペティションスプリング
新たに取り付いた「レペティションスプリング」です。
グランドピアノには元々付いていますが
アップライトピアノにはおよそ200年もの間
付いていなかった部品になります。
これが追加される事で
グランドピアノ同様のトリルや連打を可能にします。

ショット&ドロップスプリング
こちらも新たに追加された
「ショット&ドロップスプリング」です。
アップライトのグランド化に必要不可欠な部品になります。
ハンマーの弦離れを加速し
グランドピアノ顔負けの
豊富な高次倍音を発します。

グランフィールに関するお問い合わせで
非常に多いご質問として
「どうして音が良くなるの?」とのお声があります。

一般的なアップライトピアノの音は
グランドピアノに比べてどうしても劣ります。
グランドピアノの場合、ハンマーは上下の動き。
下から上がってきたハンマーは
弦を叩くと瞬時に元の位置(下)に向かって
素早く弦から離れる無駄の無い設計となっています。

ところがアップライトピアノというのは
ハンマーが横方向の動きとなっているため
打弦時、元の位置に戻ろうとする際の動きが
もっさりしてしまい弦離れが悪く
その為十分な倍音を出す事が出来ずに
どうしても音が劣化してしまうのです。
もっとも、アップライトピアノの音が劣化してしまう原因は
ハンマーの弦離れの問題だけではありませんが
非常に重要な要因の一つではあります。

グランフィールの「ショット&ドロップスプリング」は
この弦離れのもっさりを解消してくれますので
これにより今まで出せていなかった
倍音を出す事が可能になり
アップライトでグランドサウンドを出す事が可能になる訳です。

グランフィールロゴ

 

グランフィールパテント
必要なパーツ、各種加工が完了。
(実際にはここに掲載していない調整も多数しております)
ピアノに戻して、入念な調整を行い作業完了です。

トーンエスケープ
グランフィールの調整作業は完了ですが
グランドサウンドの完全再現の為
もう一工夫しておきます。
このピアノの上前パネルには
申し訳程度のトーンエスケープが一応設けてありますが
これでは音の出口として不十分です。
アップライトピアノの音が劣化している原因の一つに
「外装が全て塞いでおり音の出口が無い」というのがあります。
特に国産アップライトはこの傾向が強く
ビタビタに外装が塞いでいるため
音の通り道がほとんど無く
その為音が劣化してしまうのです。
このピアノに控えめなトーンエスケープが搭載されているのは
これを回避する為ですが、この程度では足りないです。

屋根支持棒
そこで屋根を絶妙な角度で開けられるように
屋根支持棒を制作し取付けます。

屋根

屋根支持棒を取付け

屋根を開ける
絶妙な角度で屋根が開けられるようになりました。
ちょっとした事ですが
たったこれだけで音がぐっと良くなります。

下パネル加工
さらにお客様からのリクエストで
下前パネル上部を少しカットして
トーンエスケープとしました。
アクションノイズは出さずに
弦の音だけ逃がすのに
このくらいの開口部が効いてきます。
これで上部屋根、前面トーンエスケープ、下前パネルと
ピアノ全体から音が出るようになり
ピアノを弾くと音に包まれるような感じになり
よりグランドのように感じられるようになりました。

試弾
作業完了です。
お客様に試弾して頂きます。
黙々と30分くらい弾いています。

・奥様「弾きやすいです!」「音がクリアーになりました」
・ご主人様「こんなに倍音出るんだ」「変なグランドよりいい音してるね

大変お喜び頂けました。
ご感想も私が感じている印象と同じです。

この W-106 の場合
高次倍音たっぷりながら、落ち着いた上品な音色が出ています。
離れて音を聴いてみると
このピアノがアップライトだとは気付かないくらいに
グランドピアノの音色が再現出来ました。

お手持ちのアップライトピアノを
グランドピアノにする事が可能な
「グランフィール」、
ピアノを弾くことが、より一層楽しくなります。
オススメの技術です。

 

グランフィール」については
以下のページに詳細を掲載しております↓
http://www.piano-tokyo.jp/granfeel.html
グランフィールの取付け(ヤマハW-106)@東京都立川市

 

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