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Bösendorfer ベーゼンドルファーピアノの調整

ベーゼンドルファーピアノ
ベーゼンドルファーのセミコンサートグランドピアノ、Model225 をお使いの常連のお客様が「なんとなく納品時より鍵盤が重たい感じがする」「弾いていて手が疲れる」との事で、あらためて鍵盤のウェイトを計ってみました。

すると、60g 、 65g とどの鍵盤もずいぶん重たくなっていました。低音部の鍵盤では70g 近くあるものもありこれでは少々弾いているのが辛い重さですので軽くしてあげる必要がありそうです。因にこのピアノの使用者は大人の女性です。またピアノ自体は新品で納品されてから10年そこそこです。

それにしても、このピアノの鍵盤はもともとこんなに重たい筈はないなぁと思い試しに中音の適当なハンマーシャンクフレンジのセンターピンを一カ所交換しウェイトを計り直してみたところ「50g」になりました。標準的な重さです。どうやらフレンジがスティックぎみで鍵盤が重たくなっていたようです。恐らくベーゼンにとっては少々湿度が高い環境だったのかもしれません。

お客様にハンマーのセンターピンだけ換えれば弾きやすくなる旨お伝えしたところどうせだったら全て点検いや交換してくださいとの事でしたのでいったんアクションをお預かりして全てのセンターピンを交換する事にしました。併せて黒鍵サイドの塗装の剥がれも気になさっていたのでこれらもお預かりしてきました。

レンナーのセンターピン
さっそく修理、調整していきましょう。交換に使用するセンターピンはベーセンのアクションと同じRENNER(ドイツ製)を使うことにします。

センターピンを交換する
ハンマーのフレンジから交換していきます。

センターピン抜き工具
センターピン抜きをつかってセンターピンを抜きます。

古いセンターピンを抜く
古いセンターピンが抜けました。

リーマー
新しいセンターピンを抜き差ししながらトルクを確認し最適なトルクになるよう、ブッシングクロスにリーマーを通します。

新しいセンターピン
ベストなトルクになるよう何度もリーマーを通してはセンターピンを入れてを繰り返します。

ブロワー
リーマーを通した後は、必ずエアで吹きブッシングクロスの削りカスを飛ばし、カスを残さないようにします。

センターピンカッター
最適なトルクになったら、新しいセンターピンをセットし余分な部分をセンターピンカッターでカットします。

新しいセンターピンがセットされた
センターピンが交換されました。

センターピンに潤滑剤を塗布
仕上げに、ハンマーのフレンジに推奨されている潤滑剤をほんの僅かに塗布して完了です。このピアノはエクステンドキーがあり92鍵なので残り91本も同様に交換します。

ハンマーに針を下入れ
ついでにハンマーに針を下入れしておきます。大分荒れた音色になっていたので、ウィンナートーンが出るようにします。

弦溝の入ったハンマー
ハンマーには、そこそこの弦溝が付いています。針を下入れした事により、ハンマーフェルト表面の膨らみも出来ているので、いったんファイリングします。

ファイリングペーパー
ハンマーのファイリング
今回は、シューシャインしやすいマイクロフィニッシングフィルムを何種類が使いファイリングします。

ファイリング前後
左の4つがファイリング後、右が処理前です。

全てのハンマーをファイリング
全てのハンマーをファイリングしました。

ハンマー形状
ハンマーの形状はこのようにしました。

ウィペンのセンターピンを交換
ウィペンも同様に全てのセンターピンを交換します。レペティションのセンターピンが少しトルク過多でした。

レペティションに黒鉛を塗布
ウィペンをはずしたついでに、スプリングとの接点に黒鉛を塗り直しておきました。

エクステンドベース
Model 225 には、最低音部でエクステンドベースが4鍵あり白鍵部分が黒塗りされています。

ベーゼンドルファーの鍵盤鉛
鍵盤鉛は、国産ピアノと違い1鍵ごとに異なる位置に入っています。

キャプスタン研磨前後
鍵盤奥側、キャプスタンがだいぶ曇ってきていたのでツルツルに磨き直します。左が磨いた後、右側が磨く前です。

全てのキャプスタンを磨く
全てのキャプスタンを磨き直しました。見るからに抵抗が減っていそうです。

黒鍵サイドの塗装の剥がれ
お客様が気にしていた黒鍵脇の塗装の剥がれです。

黒鍵専用塗料
黒鍵専用塗料を使います。

黒鍵サイドを塗装
塗装の剥がれが無くなり綺麗になりました。

バランスホールの掃除
フロントホールの掃除
鍵盤のバランス・フロントホールの汚れを取り除いておきます。

The Cream of the Crop Coffee
このベーゼンのアクション及び鍵盤はひとまずこのあたりまで作業しておけば問題なさそうです。コーヒーでも飲んで休憩しましょう。

筬
バランスピンの汚れを除去
アクションと鍵盤をお客様のピアノに戻します。その前にバランスピンの汚れを薬品を使って取り除きます。結構汚れがありました。

バランスピンに潤滑剤
バランスキーピンを綺麗にした後キーピンに最適な潤滑剤を塗布しておきます。

フロントピンを掃除
フロントピンを潤滑
フロントピンも同様に

ダンパースプーンの汚れをとる
ダンパースプーンも同様に

鍵盤をセット
鍵盤の重さをチェック
鍵盤とアクションをセットして今一度鍵盤の重さを計ります。

鍵盤鉛を追加
高音部はほぼ全て48gで揃っています。中音部の一部に50gを少し超える鍵盤があり低音部は55g前後で少しばらつきがありました。鍵盤の重さのばらつきを揃えたいのとお客様からの鍵盤を軽くとの要望もありましたので全ての鍵盤の重さを計り直してタッチ調整用の鉛を最適な位置に追加しました。

低音部の鍵盤鉛
低音部はこのように配置されました。

作業後の鍵盤の重さ(ダウンウェイト)は、高音部 48g から 49g中音部 50g低音部 50gから最低音部にかけて 53gに仕上げました。リフト値が推奨値を下回らないようにしました。

ハンマー整音
このピアノは、半年に一度程度の調律をしてあります。ざっと調律を拾い直してから最後に今一度、ハンマーに針入れをして音色のばらつきを揃え美しいウィンナートーンで歌うように整音して完了です。あらかじめ下入れしておいた針入れもちょうど良い塩梅でした。

ベーゼンドルファーMod.225
試弾して音色とタッチを最終チェックしました。
鍵盤のタッチは軽くスムーズに、音色は嗄れた声から、お腹から声を出すようになりました。このクラスのサイズになると鍵盤の長さも十分長く確保出来ているので非常にグランドらしいタッチになります。お客様にも試弾頂いてOKを貰いました。「購入時のタッチと音色に戻った!」との事です。

ベーゼンドルファーはオーストリアの名器で深みのあるウィンナートーンが魅力です。

■後日追加作業

タッチ調整鉛の取外し
もう少しリフトウェイトを確保出来るといい感じでしたので、
タッチ調整鉛を取外しました。
貼付け式ですので、痕跡なく元に戻せます。

タッチレール
新たに導入したのはタッチレール
リフトウェイトを確保しつつ
ダウンウェイトを下げることが可能なツール。
じわじわと取付ける方が増えております。
同時にレペティションスプリングを
気持ち強めにして、反応の良いタッチを狙いました。
タッチに違和感の出ないギリギリのラインを攻め調整します。
レスポンスの良くなった鍵盤に、お客様も満足。
弾き始めてすぐ変化に気付いておられました。
貼付け式のタッチ調整鉛と同様に
タッチレールも、ピアノに一切の加工をしませんので、
グランドピアノのタッチが重いと感じる方は、
導入を検討なさってみては如何でしょうか。

ピアノや調律に関するご質問は、
お気軽に渡辺宛 info@piano-tokyo.jp までお問い合せください。

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