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PETROF ペトロフピアノの調整

petrof piano ペトロフピアノ
チェコの名器、PETROF 新品ピアノの出荷調整です。出荷調整といってもどこかへ出荷する訳ではありません。当事務所用にと、1台輸入元にお願いしたピアノになります。

工場から組み上がってきたての新品ピアノはそのままでは快適に弾く事が出来ません。特にペトロフは。販売店や我々ピアノ調律師が十分に時間を掛けて調整してあげるとようやくピアノが本来の性能を発揮します。このように完全な状態に調整し仕上げる作業を「出荷調整」と言ったりします。このペトロフは、事務所に来てから1年くらいは弦を安定させる為の調律以外は手を付けてなかったのですが重い腰を上げ、暇を見つけて少しずつ調整しました。

まずはハンマーバットフレンジのトルクをチェックする為ハンマーアッセンブリーを1つずつセンターレールから外し調べます。全体にバットフレンジはトルク過多になっていました。トルクが大き過ぎるとレスポンスも悪く鳴りも悪くなってしまいます。1年程、適湿にして寝かしてありましたので今回全てのフレンジを適正トルクに調整し直せばしばらくの間は良好な状態をキープ出来そうなので全てのセンターピンを交換する事にします。

ペトロフピアノのセンターピン交換
交換するセンターピンにはレンナー(ドイツ製)を使用します。マイクロメーターで元の径を確認しますと、番手は #21 のようです。88本全て適正トルクに調整して交換します。

ペトロフバットのバリ
センターピンを交換する際、同時にフレンジの合わせ面もチェックしておきます。バリが出ていたりする場合があります。雑音の原因になったり、フレンジの動作に影響します。

ペトロフバットフレンジ合わせ面の研磨
バリをとって、研磨しておきます。

ペトロフのジャックスキン
ハンマーバットでは、もう一つ気になる箇所がありました。バットスキンの質がいまいちでジャックの動作に影響しそうな質感です。これを質の良いレンナー(ドイツ製)のスキンに換えてしまいます。バットスキンの交換は手間が掛かりますが良質なスキンにすることでタッチ感が向上します。

ペトロフのジャックスキンを取り除く
88個全てのバットスキンを取り除き

ペトロフのジャックスキンを交換
新しいスキンへ交換

ペトロフのウィペンフレンジのトルクチェック
ウィペンとジャックの全てのフレンジもトルクチェックしておきます。バットフレンジはほぼ全域に渡ってトルク過多でしたがジャックとウィペンは一部のセンターピンを交換するだけで済みそうです。交換していないセンターピンにも念のためセンターピン用の潤滑剤を僅かに塗布しておきました。

ペトロフのダンパースプーンを清掃
ウィペンを外しているついでにダンパースプーンの汚れを落としてフッソ系潤滑剤を塗布しておきます。

ペトロフのウィペン走り紙をカット
ウィペンフレンジの走り紙のいくつかにカットすべき不要な部分がそのままになっているものがありましたので長過ぎる部分をカットしておきました。そのままにしてあると雑音の原因になります。

ペトロフのダンパーレバースプリングを調整
ダンパーフレンジも全てチェックします。こちらもセンターピンに潤滑剤を少しだけ塗布しておきました。

ダンパーでは、レバースプリングが強過ぎるのでこの時点で少し弱めておいてピアノ本体にセットしてから再度スプリングの強さを調節します。ペトロフのスプリングは初期状態では強くなっているようで、この調整は必須になります。スプリングの強さを適正にしてやるとハンマーの走るスピードに余計な失速する力がなくなり鳴りが良くなるのと、タッチも軽くなります。弱くしすぎると止音不良になるので慎重かつ根気よく調整しなければなりません。レバースプリングにもこの時点で潤滑剤を塗布しておきました。

ペトロフのダンパーフレンジ走り紙をカット
ダンパーにも余分な走り紙が見受けられましたので長過ぎる部分はカットしておきます。

ペトロフのダンパーロッドを清掃
アクション部分ではこの他にダンパーロッドの汚れを取り除いて潤滑材を塗布しておきました。

センターレールやダンパーロッドには製造時の金属粉がずいぶん付着していました。ダンパーレバーの下部にある金色の丸い部品はダンパー総上げの調整を行う調節ネジになります。欧米のピアノでは良く見られる部品で総上げの調整を行うのに非常に便利です。

ペトロフのキャプスタン
鍵盤周りでは、キャプスタンに手を入れておきます。キャプスタンの頭をよく見ると製造過程で付くのか、丸い輪のようなものが確認出来ます。天使の輪であれば素敵ですがこの輪は不要なもので、引っかかりとなりウィペンヒールクロスを痛める原因となるので研磨します。

ペトロフのキャプスタンを研磨
番手の細かいペーパーで研いでから

ペトロフのキャプスタンをバフ掛け
バフがけしてやると、滑らかで綺麗な状態になりました。

薬品に寄りかかる猫
猫が寄りかかっているビンに入っている薬品でキーピンの汚れを除去します。
清掃後、バランスピンには何も付けずにフロントピンのみキーピン用の潤滑剤を使用しました。

ペトロフのバランスキーピンを清掃
バランスピンを綺麗に

ペトロフのフロントキーピン
フロントピンも綺麗に

ペトロフのダンパーレバースプリングを調整
アクションをピアノに戻して再度ダンパーレバースプリングの強さを繰り返し調整します。

ペトロフの鍵盤ならしとあがき調整ツール
白鍵ならし、あがきを済ませた後黒鍵のならしとあがきを調整します。鍵盤の静止状態の高さと打鍵時の深さを揃える作業です。初期状態では高さも深さもバラバラでこのままでは演奏しにくいです。黒鍵のならしとあがきは、白鍵の働きに合わせますがこれらのツールを使うと正確に揃えられます。

このペトロフの黒鍵ならしは、12.3mm +-0.3mm ですのでこれに従って12.3mm に揃えます。因にバランスブッシングクロスのクリアランスが 0.2mm、フロントブッシングクロスのクリアランスが 0.5mm です。

ペトロフの鍵盤ならし
バランス部では、各々の黒鍵の上に乗っているパンチングペーパーがそれぞれの黒鍵に必要でした。

ペトロフの鍵盤ならし2
バランスパンチングペーパーを追加していきます。

ペトロフの鍵盤あがき調整
フロントにはこれらが必要でした。

ペトロフの鍵盤あがき調整2
フロントパンチングペーパーを追加していきます。
バランス・フロントとも、2巡、3巡作業して均一に揃えます。フロントパンチングクロスには国産のような柔らか過ぎるクロスではなく硬くしまったクロスが使われています。欧州のピアノでは、タイトなパンチングクロスが使用されこれはタッチ感に与える要素の一つです。

鍵盤からアクションに至るまでの動作が正常になったところで、再度鍵盤のウェイトを見直します。国産ピアノとは違って、製造時にきちんと鍵盤の鉛調整はされているのですがフレンジや各稼動部のトルクを見直したのと各スプリングの強さを見直したのであらためて必要な箇所に鍵盤鉛を追加していきます。

ペトロフピアノの鍵盤鉛調整
鍵盤の重さを計るための分銅を使い1鍵ずつ鍵盤の下がる重さと上がる重さを測定します。
このペトロフピアノは、DW が 50g 、LW が 25g に指定されています。この重さは、現在世界中のピアノの平均的な値です。

ペトロフピアノの鍵盤鉛調整2
鍵盤サイドに鉛を入れる為の穴を開けます。

ペトロフピアノの鍵盤鉛調整3
専用のポンチでかしめると鉛が膨らみ固定されます。

ペトロフピアノの鍵盤鉛調整4
いくつかの鍵盤に 8φの鉛を追加しました。一カ所だけ10φがちょうど良い感じでした。

ペトロフのバットに走り紙を貼る
大事な作業が残っていました。ハンマーの走り、間隔を揃える作業です。バットフレンジの裏に走り紙を貼ってハンマーの走りを修正します。

アルコールランプ
ハンマーの間隔や捻れをアルコールランプの熱でじんわりと暖めて修正します。

ハンマーの間隔が不揃い
中音ブラケットから2番目のハンマーが少し右に寄っている為にハンマーの中心で打弦することが出来ない状態です。

ハンマーの捻れや間隔をアルコールランプの熱で修正
ハンマーシャンクを暖めて...

アルコールランプの熱ででハンマーの間隔を揃える
正しい位置に修正されました。

ペトロフピアノの整音
整調を全行程(必要に応じて2巡、3巡繰り返す)終えたら最後に音色造り「整音」を行います。
出荷時のハンマーは針入れが足りずガチガチの音色になっているので十分に針入れをし、ペトロフの特徴である甘く芳醇な音色が出るように調整します。一度針入れを完了し、少し弾きこみます。そうすると音色にばらつきが出てきますので再度ピッカーで針を入れ音色を揃えます。

petrof pianoここまでの作業を終えて、ペトロフは素晴らしいピアノになりました。
調整前からもともと鳴りの良いピアノでしたが調整後は鳴りが2割増しくらいになったのが驚きです。これは本当に予想していたよりも鳴るようになっていて近い感じでは、弾いたことがある人であれば分かりますがちょうどフリードリッヒ・グロトリアンが小さいボディから想像できないほど爆鳴りするあの感じに近い感じになってます。この鳴りに貢献したのは稼動部のロスが無くなった事はもちろんのこと今回一番効いたなと感じたのが各スプリングの調整です。バットスプリングとダンパーレバースプリングが出荷状態では強すぎたため、ハンマーを失速させていたのがピアノ本来の実力を閉じ込めていたようです。ペトロフは、相当高いポテンシャルを秘めています。

petrof piano
少し内部を見てみましょう。低音から高音まで総アグラフとなっています。 端から端まで綺麗に鳴ります。

ペトロフのデトアアクション
アクションはデトアです。

ペトロフのレンナーハンマー
ハンマーはレンナー(ドイツ製)が採用されています。このハンマーでも十分に良い音がでますがそのうちローヒートのコールドハンマーに交換してみるのも面白いかなと考えてます。

ペトロフピアノのエンブレム
ペトロフピアノのフレーム
フレーム中央付近にあるペトロフのエンブレムです。大変美しいです。

おまけ...

ヤーンの木製インシュレーター
ペトロフピアノの美しい外装のフィニッシュに合わせドイツ、ヤーンの木製インシュレーターをチョイスしてみました。

ペトロフピアノのインシュレーター
とても綺麗なインシュレーターです。昨今は、住宅事情もあってか仕方ないのかもしれませんが防音とか耐震と称して、分厚いゴム製のインシュレーターを履かせる方が多いですが音色のことを考えると、硬くしっかりした床材と木製インシュレーターの組み合わせが音の面ではお勧めです。

↓ペトロフピアノの調整はまだまだ続きます↓ペトロフピアノの調整(その2)へ移動

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お気軽に渡辺宛 info@piano-tokyo.jp までお問い合せください。

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