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PETROF ペトロフピアノの調整(その2)

ペトロフピアノ

事務所のペトロフのアップライトピアノをグランドピアノ並みに連打出来るアップライトピアノにする作業を行いました。

グランフィールパーツ
アップライトのグランド化には藤井先生考案のグランフィールを用います。

アップライトピアノにグランフィールを取付ける事で

  • 連打がグランド並の秒間12から13回可能になる。(通常のアップライトは7回/秒)
  • 鍵盤を底まで降ろしたあと、少しキーを戻したところで次の音が出せる。(アップライトは原則、完全に鍵盤を元の位置に戻さないと次の音が出せない)
  • ダイナミックレンジ(音量の幅)が広くなり小さい音から大きな音まで出せるようになる
  • 高次倍音が増しグランドのように華やかな音色になる
  • 鍵盤を下げたあと上がる際に底から押し上げるようになるので指に吸い付くようなキータッチになる

これらのグランドピアノの鍵盤のタッチと響きをアップライトで実現可能になります。(素晴らしい)

グランフィールの施工に入る前にデトアアクション採用のペトロフで気になっていた部分に手を入れておきます。

デトアのバットスプリングですが少々柔軟性にかけるようです。スプリングと言うからにはもう少し「ビヨーン」と柔軟性が欲しいのです。柔軟性の無いバットスプリングではキータッチにアップライト感が増してしまいグランド化の妨げになりますのでこの機会に全て交換しておく事にしました。

レンナーのバットスプリング
レンナーのバットスプリングに交換します。

防錆処理
バットスプリングは作業前に防錆液に漬け、年数が経過しても輝きを保つようにしてから使用します。

この防錆液は真鍮、銅専用の液体でグランフィールのスプリングにも筆を使って使用します。(因に油ではありません)

バットスプリングの交換
88箇所のバットスプリングを交換します。

ダンパースプリング交換
結局、ダンパースプリングもデトアのオリジナルでは柔軟性がなくこのままではタッチ感に悪影響が出ると判断しダンパースプリングも全て交換しました。

ダンパースプリング交換2
デトアのオリジナルで採用のスプリングは「硬いハリガネ」という感じ。このダンパースプリングは調整でカバー出来る許容範囲を超えています。柔軟性のあるスプリングに交換してタッチにバネ感を極力出さないよう入念に調整します。唯一、ジャックスプリングだけはオリジナルのものでいけそうでした。グランフィールで2ヶ所スプリングが増えますからバネ感を極力取り除くような調整が必要になります。

デトアが採用されているペトロフではその他、バットスキンとキャッチャースキンの質も気になるところですがこれは以前の作業で交換済です。デトアの載ってるペトロフをお使いの方はスキンの質とスプリングの質を調律師さんに確認してもらって、必要に応じて質の良いものに交換してもらうと大分タッチが改善されると思います。

レペティションスプリング
取付けられたグランフィールのレペティションスプリング。一般的なアップライトピアノのジャックは70mm程度ありますが、このデトアアクションのジャックは60mmちょいと短めなので取付けたレペティションスプリングは標準のグランフィールのものより短いスプリングになります。

ショット&ドロップスプリング
グランフィールのもう一つのスプリングがショット&ドロップスプリング。このスプリングによりハンマーの離弦が加速しグランドピアノのような響きを得る事が可能に。

バット
グランフィールではパーツの取付けだけでなく「バット加工」が必須となります。写真は加工前の普通のアップライトのバット。これをゴニョゴニョしてよりグランドのタッチに近くなるようにするのです。加工の詳細はお見せ出来ませんがヒントは「グランドではこうなってるのにどうしてアップライトはこうなの?」という事です。(なんのこっちゃ)ようするにグランフィールはアップライトを限りなくグランドに近づける意欲満々な技術なのです。

バット加工
バット加工は、ボール盤にバット加工用の治具をセットして行います。

グランフィールパーツの取付けは済みましたがペトロフのグランド化はまだ終わりません。

鍵盤下のパンチングクロスをグランド用に交換してよりグランドのタッチと響きに近づけます。

ペトロフのパンチングクロス
ペトロフには、もともと硬めのしっかりしたパンチングクロスが採用されています。(国内メーカーのはふにゃふにゃのパンチングが...)

ホワイトパンチングフェルト
それをアンドレ・オーレベークさん考案のホワイトパンチングフェルト・コニカル(グランド用)に交換して、よりタッチと音色をグランドライクなものに近づける狙いです。ホワイトパンチングフェルト・コニカルは上が22mm、下が23mmのテーパー状になっていてタッチと音色にダイレクト感が注入されます。

スタインウェイ、フロントパンチングペーパー
グランド用のパンチングに交換するにあたって下のパンチングペーパーもグランド用に交換しましたがパンチングペーパーは、ロウが塗ってあり硬めのスタインウェイのパンチングペーパーを使用しました。パンチングペーパーのような細かなパーツもしっかりした硬いものを使うことでタッチと音色に変化があります。良いピアノに仕上げるために細かい部分も手を抜かないようにしておきます。

ホワイトパンチングフェルトに交換
フロントパンチングクロスをグランド用のホワイトパンチングフェルトに交換しました。

あがき調整
パンチングを交換したので「あがき」も再度調整します。あがきの調整は、様々なツールを使って正確に行います。

グランフィールの特徴の一つであるグランドピアノの鍵盤の動きと同じように鍵盤を押し下げたあと、底から鍵盤が押し上がってくる感触というのがあります。この指に吸い付くような動きをより再現するために鍵盤のリフトウェイトを少し増やすことにします。

タッチ調整鉛
左が通常の貼付け式のタッチ調整鉛。右は通常のよりも軽く薄い 5g の鉛。今回はこの 5g の鉛を追加してリフト値を少しだけ増やします。

鉛の位置決め
1鍵ずつ分銅を使って最適なリフト値を得られる位置を見つけていきます。

鉛を追加
鉛は鍵盤の裏(底)側に追加していきます。通常の貼付け式の鉛よりも薄いので貼付ける場所の制約もいくぶん無くなり良い感じで追加出来ました。

アップライトのグランド化完了
グランフィールパーツは正確に美しく施工することはもちろん大切ですがそれ以上に取付けてからの調整が肝です。グランフィールを生かすも殺すも調整次第ということで入念に調整をして、これでペトロフのアップライトにグランドピアノの性能と響きが実現されます。

さっそくグランフィールを試してみての感想としてはまず「とにかく弾きやすい」という印象。5分弾き「ん?」15分弾き「うむ。」30分弾いて「おぉー!」と、弾けば弾く程実感します。これはちょっと感動モノ。レペティションスプリングが追加された事で鍵盤を下ろした低い位置での打鍵が可能になりトリルがしやすい事この上なし。下ろした鍵盤は、そのあと指に追従するようにクッと上がってくる感触があり鉛の追加によるリフト値の変更とあいまってグランドの鍵盤のような動きがうまく再現されました。

レペティションスプリングの追加によって常にハンマーの重量を感じるようになりますのでアップライト慣れしている人には最初は鍵盤が少し重くなったように感じられることがあるかもしれません。ただこれはしばらく弾いているとすぐに慣れる筈。鍵盤の挙動がグランドに近づいていることでむしろ弾きやすく感じる部分のほうが大きい筈です。鍵盤のこの動き、欲しかった人多いんじゃないかなぁ。

そういえば、埼玉のナトリさんのところで私がグランフィールを付けたピアノを何曲か試弾していた時、新潟の調律師、池田さんから「ずっと弾いてられる感じでしょ?(笑)」と言われたのですが、まさにそんな感じです。グランフィールが付いているとずっと弾いていたい気分になります。

音色に関しても、ショット&ドロップスプリングの「リムショット理論」が効いてます。一聴して気付くのは、高音域の倍音の増加。華やかさ(煌びやか)が加わってリッチな音色になっています。くわえて今回はホワイトパンチングフェルトとの相乗効果で音色とタッチにパワーが注入された感じです。総評としてはグランフィール、いいです!アップライトピアノが「弾きやすく、楽しく」なります。縦型のグランドピアノというべきかアップライトでもないグランドでもない新しい楽器に出会った感じです。

グランフィールによってアップライトピアノの可能性が無限に広がるのではないでしょうか。

都心では、狭いスペースでアップライトしか置けずアップライトしか選択できない方も少なくありません。アップライト用のコンパクトな防音室を導入されている方なんかもそうですね。グランドのタッチが欲しいけど諦めていた、そんな方々にとっては夢のような技術です。

また、日々調律にお伺いして拝見するのですがグランドピアノを使っているお客様でもせっかくのグランドなのに大屋根を閉めて弾いている方がかなりいて場合によっては下側の響板まで塞いで弾いてたりします。つまり多くの場合グランドのキータッチが必要なのであって大きな音は必要としていない。(こと都会では)それならば、そこそこの音量のアップライトピアノにグランフィールを取付けたアップライトでグランドの表現力やキータッチが再現出来るのであればそういう選択肢もアリなんじゃないかと。

まだまだ夢は広がります。アップライトを使ってレッスンを続けて来て自身のテクニックも向上してきてアップライトの鍵盤では追いつかなくなってくる。そこである時期にグランドのキータッチが必要でグランドに買い替えるという場面があります。これまでは、愛着のある、そしてまだまだ使えるアップライトを手放してグランドに買い替えるしかなかった訳ですが、これからはグランフィールでアップライトにグランドの表現力を搭載することにより買い替えずに済む人もいることでしょう。

また一般的な売れ筋のグランドというと「3型」で現行の国産メーカーの3型だと二百数十万円します。二百数十万円というと欧州製のアップライトピアノに手が届く金額です。音色の良い欧州製のアップライトピアノにグランフィールを取付ければ国産グランドよりも音の良い縦型グランドが手に入る訳です。あらたな選択肢としてそういうのもアリではないかと思います。

グランフィールはアップライトピアノに様々な可能性を与えてくれる楽しくて素晴らしい技術です。

 

↓ペトロフピアノの調整はさらに続きます↓ペトロフピアノの調整(その3)へ移動

 

↓グランフィールについては以下のページもどうぞ。
グランフィール Granfeel

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