PETROF Magnetic Accelerated Action

ペトロフピアノ

こちらへの投稿はご無沙汰です。
ここ数年はいろいろと忙しく
投稿が手軽なSNSへのポスト多くなってますので
そちらもご覧いただけると幸いです。


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ペトロフ MAAアクション

あるピアノ教室から依頼があった4台のピアノの中に
ペトロフのグランドピアノがあり
それが Magnetic Accelerated Action(MAA)搭載でした。


MAAアクション

赤丸内が普通のアクションと違う部分。


MAAアクションの磁石

近づいて見るとこのようにウイペンとレールに
磁石が反発するように取り付いてます。

磁石の反発により、ウイペンは常に上に持ち上げられる格好になるので
ウイペンを上に持ち上げる動作が有利になることや
タッチウエイトを軽くする効果などが期待できます。

かつて似たような発想でウイペンとフレンジを
ウイペンアシストスプリングで連結するのが
流行った時代がありましたがそれに近いものですね。

磁石にすることでウイペンと何かが
物理的に接触しないのは上手いやり方だし
ウイペン側の磁石の頭は工具で回せるようになっているので
磁石の効きを自由に調節出来るのが便利。


MAAのレペティションレバー

レペティションレバーは磁石に工具が挿せるように
切り欠いてあります。親切!


MAAの調整

実際に工具をセットしてみました。
磁石へのアクセスも容易だし、よく考えられてるなぁ。


低音部白鍵
低音部黒鍵

驚いたのは低音セクションの白鍵・黒鍵ともに
鍵盤鉛は一個も入っていないこと。


中音白鍵

中音セクションの途中まで
鍵盤鉛が一個も入っていません。


中音鍵盤板の肉抜き
高音鍵盤板の肉抜き

中音の途中から最高音部までは
大胆に鍵盤板の肉抜きがされていました。

一般的なグランドピアノでは
低音で3個から4個の鍵盤鉛が入っていて、
中音で2個から3個、次高音で1個から2個と
鍵盤の手前側に鍵盤鉛が入っています。

MAA搭載アクションでは
鍵盤鉛を使う必要が無いので
鍵盤由来の慣性モーメントを大幅に小さく出来て
タッチウエイトを軽くすることを実現しています。

実際に弾いてみた感想としては
普通に弾いていてなんの違和感もないし
試しに速めのトリルや連打をしてみると
慣性モーメントが小さいことで
素早い動作が楽に出来ることを実感しました。


鉛の有害性が指摘される昨今、
可能性のあるシステムだなぁと感じました


渡辺ピアノ調律事務所 渡辺雅美
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
メール info@piano-tokyo.jp
ウェブサイト https://www.piano-tokyo.jp
TEL 03-3429-6122

ザウターからR2を取り外す

SAUTER(ザウター)のアップライトピアノには
R2アクション搭載モデルというのがあります。

「R2アクション」。
なんだか強そうな名前ですが
普通のアップライトピアノには付いていない板バネが
ジャックに追加されているアクションのことです。

鍵盤を押し下げていくと、ジャックが手前に倒れていきます。
板バネはジャックとせめぎ合う格好で
ジャックを元の位置に戻そうと作用します。

これによりジャックがバットの下に素早く戻れるので
連打性が上がるという理屈ですね。

そんな便利なものなら、他所のアップライトピアノにも
付いてて良さそうなものです。
ですが普通のアップライトに板バネ(R2)がついてないのには理由があります。

ジャックが手前に倒れていくのと押し合うように作用するバネというのは
タッチを猛烈に重くしてしまうのです...

素直にジャックが脱進できないので
タッチも重く粘っこい感触になってしまい
どうにもスッキリしないです。


ある時、某クラヴィアマイスターがとても良いことを言ってました。

「ピアノは完成形。何も付け足す余地はないし、何かを差し引く余地もない」と。

まさにその通りで、現代のピアノは限りなく完成形で
何かを後から付け足す余地はないのです。

従って、何か付け足したら必ず問題が生じることとなります。


私がこの仕事を続けていて感じるのは
アップライトピアノという楽器はなかなかに良く出来てるなぁってこと。
巷で「アップライトだと上手く弾けない云々」という話もありますが
そのほとんどは拝見させていただくと整調不良...
という訳で、今回は思い切ってR2(板バネ)を取り外して
普通のピアノアクションに戻してみようという試みです。


ジャックに植えられた板バネがR2の正体。


ジャックに植えられた板バネがR2の正体。
丸く開けられて穴に挿し込んで接着剤で固めてあるだけ。


バネはペンチでつまんで引き抜くと簡単に取り外せます。


バネが取り外されて普通のピアノと同じ仕様になったウイペンアッセンを無表情で見つめる猫...


取り外したバネは念の為セクションごとに保存しておくことにします。
万が一、元に戻したいとなった時に戻せるように。
(おそらく戻したいとは思わないはずですが)


実はこのザウター、湿気でスティックだらけです...
今回はスティック修理も同時に行います。

アクション全体で300本近くあるセンターピンを交換していくのですが
無心で地味な作業をひたすら続けます。


とぼけた顔のニャン太郎。作業を手伝ってくれたりはしない...


お客様の好みは落ち着いた音色。
このピアノはどちらかというとガン!ガン!とうるさい音がなっているので
ハンマーは事前にたっぷり針入れをしてファイリングしておきます。


アクション関係の作業が終わったら
ピアノにアクションをセットして整調を行います。

整調の工程の一つレットオフ調整。
ボールを手から離すタイミングをいつにするかといった調整です。

ピアノの場合はボールはハンマー、手はジャック。
ハンマーが44mm進み、弦まで残り2mmのところまできたら
ジャックの突き上げは終わり、慣性でハンマーは弦まで進む仕組みです。


調律と整調が終わったら
整音を繰り返して理想の音に近づけていきます。


ハンマーファイリングをした時には
必ずチェックしたいのが「同時打弦」。
ハンマーの先端を弦に軽く当ててピックで弦を弾いてみる。
ハンマーの先が3本の弦に同時に接触していれば
3本の弦からは同じようなミュート音が「ペンっ!」と鳴る。


湿気によるスティック対策として
ダンプチェイサーも取り付けました。

除湿機による部屋全体での湿度管理も行ってくれるようなので
今後は湿気によるトラブルは心配なさそう。


作業が終わって顧客に試弾してもらったところ
落ち着いていて芳醇な音色が鳴っていて満足いただけました。
R2のバネが無くなったことで、スッキリしたタッチにもなりました。
ぶっちゃけて言えば、板バネは必要ないです。

ザウターR2やグランフィールをお使いで
鍵盤が重たいと感じる方、バネの取り外し承ります。
お気軽にご相談ください。


作業のご依頼、お問い合わせは
Eメール info@piano-tokyo.jp までお気軽にどうぞ。

渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
メール  info@piano-tokyo.jp

ヤマハC6LAのタッチウエイトマネジメント

ヤマハC6LAのハンマーヘッド

ヤマハC6LAのオーナー様からメールで作業依頼が。
「せっかく購入したのにタッチが重くて弾く気にならない...」とのこと。
製造番号6093XXX なのでタッチの重たい年式であることと
同時にこのクラスになると鍵盤も長くなるので
慣性モーメントが大きくなり重たいのでしょう。
タッチウエイトマネジメント作業で軽くて弾きやすいピアノに調整していきます。


ジャック前後

前任の調律師さんに何度か
「鍵盤が重いので軽くしてほしい」と
何度か伝えていたようですが軽くならなかったとのこと。
ジャックをみると前に倒してありました。
ジャック位置を前にしてもタッチは軽くなりません...


ヤマハC6LAのHSW測定

まずはアクションの各部データ採集から。
HSWの測定は全鍵測定でも構いませんし
1鍵ごと、あるいは数鍵ごとでも傾向を知ることは出来ます。
私の場合は念の為というか性格上全鍵測定します...


C6LAのウイペンバランスウエイトの測定

こちらはWWの測定。
ウイペンは基本的に任意の1鍵でOK。


FWの測定

FWの測定。平衡等式を作成するのに必須。


ヤマハC6の鍵盤長比較

C6クラスになると、低音と高音でこんなに鍵盤の長さが違うんですね。
上が低音(1key)で下が高音(88key)です。


オリジナルのHSW

HSWを全鍵測定しました。
低音は指標9.5から指標10と重めで推移。
中音に入ると指標8に下がり、次高音まで同じような傾向。
最高音では指標10と重くなっています。
このように88鍵の中で重さの傾向が音域によって違うのは普通ですし
隣り合うハンマーで4g、5g重さに差があるのが一般的です。
このピアノでは、低音と中音の境目では7gもハンマーの重さが違っています。
これではタッチは揃う筈はないですし、音色も揃いません。



データ採集

各部のデータ採集を済ませたら平衡等式を作成し
現状把握と改善の可能性を施行します。


オリジナルでの平衡等式

C6LAオリジナル状態の平衡等式。
黒鍵こそBWは重いですが、白鍵だけでいえば寧ろそこまで重くないですね。
しかし実際弾いてみると重い。とくに低音は重い。
「BW = タッチウエイト」ではない、ということです。


3要素関連表

低音16keyのBWは40.5gで
BWだけで言えばそこまで重い訳ではなく標準です。
しかし実際に弾くと重い。
3要素関連表を確認すると分かりやすいです。
16keyはHSWが指標10で、SRは5.7。
これらが交差する数値はBW45g。
16keyをシーリング値マイナス3gとするにはBWは45gが適正ということに。
しかし実機の16keyはBW40.5g。
つまり鍵盤鉛をたくさん入れて、BW40.5gにしているということになります。
こうなってしまうと慣性モーメントが大きくなり
BWが標準であるにもかかわらず重たいタッチになってしまいます。
「BWこそがタッチウエイトである」ということの弊害ですね...

Fは低音から中音はまずまず。
中音から高音にかけて高め。

FWは低音でシーリング値を超えています。
中音から高音にかけてはシーリング値マイナス。

HSWは低音で指標9.5から指標10と重め。
中音から高音は指標8でまずまず。

SRは低音から中音で5.6から6.2。
許容範囲ですが結構バラついてるものですね。


C6LAの16keyでの事前シミュレーション

とりわけ重たい低音の鍵盤で平衡等式を利用してシミュレーション。
鍵盤は16Key。
F処理をして、Fを13.5gから11.5gに。
HSWを12.3gから11.8gへ5g減量。
これによりBWは40.5gから37.5gに下がります。
SRはパンチングカットで一段階のみ下げます。
5.7だったSRが5.4に。BWは37.5gから33.5gまで下がりました。
ラストに鍵盤鉛調整でBWを33.5gから38gまで上げると
FWは38.6gから34.1gに下がり
シーリング値マイナス3.4gとなり無理のないアクションになりそうです。


鍵盤テンプレート

慣性モーメントの試行に必要な鍵盤テンプレートを作成します。



FWと慣性モーメント比較計算

FW比較計算表 & 慣性モーメント(鍵盤)計算表

D行を採用。
タッチを重くする一番外側の鍵盤鉛を抜いて
新たに152mmの位置に12mmの鉛を追加。
40mmの位置に14mmの鉛を追加することにします。
CoG は0.474となりました。


最終BWと慣性モーメント


最終的にBWは40.5gから38gとなって
換算慣性モーメントは187,571gcm2から
171,716gcm2と8.5パーセント下がりました。


HSW調整後

HSW調整後のスマートチャート。
黒がオリジナルの状態。赤が調整後です。
指標9付近でばらつきの無いように仕上げました。


ハンマー鉛

軽いハンマーには鉛を入れます。


鉛の接着

ハンマー鉛は軽くかしめますが
緩むことがあるので瞬間接着剤を少量垂らして
スプレープライマーを吹きしっかり固定します。


パンチング接着

バランスパンチングクロスの半カットで
SRを一段階下げます。
パンチングを鍵盤底面に接着して
鍵盤ならし用の治具をバックチェックにかけて
後方荷重で乾くのを待ちます。
乾いたらホールのセンターでクロスをカットします。


キーピン磨き


前後キーピンも磨いておきます。
さほど古いピアノでもないですがかなり変色しているのは
このピアノ、湿度管理がされていなかった上に
音楽室のピアノにかけてあるような
分厚いピアノカバーがかけてあったからです...


バランスホールの掃除

バランスホールのクリーニング。
細麺棒にベンジンをつけてホール内をクルクルと。
ベタつく汚れが根こそぎ取れて
これだけでもかなりタッチがスッキリします。


鍵盤鉛を抜く

タッチを重くする外側の鉛を抜きます。


外側の鉛を抜いた鍵盤

外側の鉛が抜けました。


BW基準の鍵盤鉛調整

外側の鍵盤鉛を抜いた状態で
新たにBW基準で鍵盤鉛の位置を決めます。


新たな鍵盤鉛の位置

既存の鉛位置よりも内側に鍵盤鉛を入れて
軽いタッチを実現します。


鍵盤穴開け

位置決めした位置に穴開けをして鉛をかしめたら出来上がり。


ハンマー針刺し

タッチウエイトが軽く弾きやすくなったら
同時に音色も楽しんで欲しい。
「色気のある音」を目指してハンマーに針を下刺し。


ハンマーファイリング

針入れが終わったらファイリング。
弦溝を取り除くと同時に
ハンマーが卵型になるように整形します。
弦溝が付いているとハンマーが弦を「線」で打弦して上手くないのです。
ハンマーに丸みを持たせることで、弦と接触する面を少なくすると
良い音色になるんですね。


ベディングスクリュー

整調も一から見直しになりますが
スタートはベディングスクリューの出具合。
このピアノは2.5mm強、筬から出ていました。
こうなると鍵盤とアクション全体の位置が
設計上の高さより高くなってしまうので
その後いくら各部を基準寸法にしたところで上手くいきません。


ベディングスクリュー調整

ベディングスクリューを基準寸法まで引っ込めました。
納品して調律して、整調を見直して、
あらかじめおこなっていた整音の仕上げを行なって作業完了です。
1台のピアノをそこそこ良い状態にするのは意外と大変なのです...


ヤマハC6の作業完了

納品と調整が終わりお客様に早速試弾してもらいました。
結果は
「軽い!」
大満足。ヨカッタ。


グランドピアノの重たいタッチ、標準的なタッチに調整します。
作業のご依頼、お問い合わせは
Eメール info@piano-tokyo.jp までお気軽にどうぞ。

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ヤマハ C3AEのタッチウエイトマネジメント

ヤマハ C3AE

「低音の鍵盤が重くて左手が痛くなる」とメールで【精密タッチウエイトマネジメント】作業のご依頼がありました。ピアノはヤマハ C3AE 製番60005XX です。Y社のタッチは製番500万番台の途中から、現行のモデルに至るまでタッチ重め傾向が続いています。


ジャックが手前に寄せてある

前任の調律師さんにも「タッチを軽くしてほしい」とお願いしていたようで、ジャックがかなり手前に倒してありました...
いまだにタッチを軽くするためにジャックを手前に倒す技術者が居るようですが、残念ながらジャックを手前にしてもタッチは軽くなりません。
AR、SRもそうですが、とくにギアレシオがかなり変化してタッチは軽くなるどころか重くなってしまいます。


ローラー芯板とジャックの位置

横から見るとジャックが手前にセットされているのが分かります。
ジャックの奥側(赤ライン)はローラー芯板の奥側(白ライン)と重なるのが正しい位置です。アクションの構造的からみても、ジャックを手前にすると加速が得られない(パワーロス)ことになりタッチは重く感じられるようになってしまいます。
作業終盤の仕上げの整調で正しい位置に直します。


ハンマーストライクウエイトの測定

88鍵のHSWを測定し、現状を確認します。


HSWスマートチャート

HSWスマートチャートを作成。
お客様が感じていたように「低音が重い」のが確認できます。
14keyは指標10.5もあります。
低音は概ね指標10。
中音は指標7から指標8。
次高音の終わりくらいから指標9になり、最高音で指標10。


スタンウッドの平衡等式

平衡等式を作成して現状分析。
BWは45gを超える鍵盤も多く重めの鍵盤がある一方で、BW40g前後の鍵盤も混在。

Fは9.5gから13.5gと問題なさそう。

FWは低音ではシーリング値超え。中音はシーリング値マイナス。

HSWは低音で指標9から指標10と重め。中音・高音は指標7から指標8で軽め。

SRは6.1から6.5と高め。


平衡等式を利用して事前シミュレーション

平衡等式を利用して、重たい低音をどの程度軽くすることが可能かのシミュレーション。
画像は16key(C)です。
結果として、BW38gにするとFWは36.1gになりシーリング値マイナス1.4g。
この時SRは5.5gまで下がってますのでこの辺りが限界でしょうか。
またはBWをもう少し重たくしてFWを下げて鍵盤の動きを優先することも考えられます。
あるいはSRをさらに下げればBWとFWを下げられますが、いよいよタッチが出なくなってしまう可能性がありますね。


HSW調整後

HSW調整後のスマートチャート。
低音を指標9に下げて、中音が低音と繋がるように指標8.5に上げ、
高音で指標9となるように調整しました。


鍵盤テンプレート

平衡等式と慣性モーメントとを連動させて調整するために鍵盤テンプレートを作成。


FWと慣性モーメントの計算表

16key(C)です。慣性モーメントを大きくする外側の鉛を抜いて、新たにバランスピンから96.5mmの位置に14mmの鉛を。56mmの位置にも14mmの鉛を追加します。


BWと慣性モーメント値の想定

結果、BWは46.5gから38gに下がり18パーセント減。
換算慣性モーメントは173,518gcm2から159,774gcm2になり7.9パーセント減に。


シャンクフレンジのセンターピン交換

一部のシャンクフレンジでトルクの大きい状態でしたので、センターピン交換をしておきました。


パンチングカット

パンチングカット後の接着待ち。


ウイペンヒールにシム

ウイペンヒールにシムを挿入。


曲がったジャック

ジャックがサポートのセンターからずれているものがあります。


工具を使って

専用のプライヤーを使って


ジャックがセンターに

ジャックがセンターにきました。


ヒールの汚れ

ヒールの汚れもこの機会に


ヒールの汚れを除去

ヒールの汚れを一拭きしておきます。


バランスホールの掃除

ブラシを使ってバランスホールの掃除。


バランスホールの汚れ除去

バランスホールのシンク内側は汚れでベットリ。


バランスキーピン磨き

バランスキーピン磨き。
錆よりは汚れてベトベトしているのがいけない。


電動工具で一気に磨く

電動工具で一気に磨きます。


キーピン全磨き

キーピンが綺麗になったらベディングがそのままなのが気になるので


ベディングスクリュー磨き

ベディングスクリューも磨きました。


ローラーの黒鉛除去

ローラーの黒鉛を落としておきます。
左がファイリング後、右がファイリング前。


鍵盤鉛抜き

外側の鍵盤鉛が動的重さに影響するので、あらかじめ抜いておきます。


BW基準での鍵盤鉛調整

BW基準で鍵盤鉛調整。
オリジナルよりも内側に鍵盤鉛を寄せて
動的重さを下げます。


鍵盤穴開け

新たに内側に鍵盤鉛を追加するために穴開けをします。


ピアノにアクションを戻して、整調をすませ完了です。
(整調作業の写真は省略で...)
「軽くなってるかも!」と喜んでもらえました。


グランドピアノの重たいタッチ、標準的なタッチに調整します。
作業のご依頼、お問い合わせは
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渡辺ピアノ調律事務所
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ディアパソンD-164のタッチウエイトマネジメント

ディアパソンD-164

ピアノの先生からの作業依頼です。(私が長年調律にお伺いしているピアノの先生から、こちらの先生への紹介案件です)
鍵盤が重く、せっかくのグランドピアノなのに連打しにくく、生徒さんも力んで弾いてしまったりするのでタッチを調整して欲しいとの事です。カワイ系はタッチの重いピアノが多いので作業依頼が多いです。
作業を行うためにアクションをお預かりにお伺いしました。ピアノは地下防音室に設置されていて、湿度管理もしてあります。これから中村式タッチウエイトマネジメントで標準的なタッチのピアノに調整していきます。


鍵盤の下の埃

鍵盤を外すと埃やゴミが降り積もってます。ここ数ヶ月で2回、別の調律師さんに調律に来てもらってるとのですが、掃除や整調はしてもらえなかったようで。


平衡等式

データ採集をしてから平衡等式を作成します。
BWは41gから53g!これでは重過ぎて弾けませんね...
Fは10.5gから19g。こちらも要調整。
FWは全鍵でシーリング値マイナス。鍵盤鉛を見ると数が少なく、BWは重めに設定されているようです。
HSWは低音が指標7から9。中音が指標9から9.5。高音が指標10.5。カワイ系のピアノに見られる傾向で低音が軽く、中・高音は重くなっています。
SRは5.6から6.2でした。


HSWスマートチャート

HSWスマートチャートを作成。
低音は軽く、中音と高音は重め傾向。バラツキも大きいのでタッチは揃って感じられず、音のアタックも揃いづらい状態です。


平衡等式を利用してシミュレーション

平衡等式を利用して事前シミュレーション。
「DW、UW」が気になる場合は、このようにDWとUWの欄を隠して作業を進めと良いかもしれません。
HSWを0.1g削減しBWは53gから52gに。
パンチングの半カットでSRが0.4下がると想定しBWは52gから47gに。
ヒールへのシムの挿入でSRをさらに0.4下げBWは47gから42gに。
最後に鍵盤鉛調整を行いBWは38gになり、FWは28.2gとなりました。


FWと慣性モーメント

外側に入っている14mmの鉛を抜いて、内側に3つ鉛を追加することに。
オリジナルより鉛の数が増えるのにタッチが軽くなるのは慣性モーメントの影響です。中村さんの書籍「タッチウエイトマネジメントの方法」71ページの図を参照ください。


最終的な想定値

結果はBWが28パーセント減、慣性モーメントは5.8パーセント減となりました。弾きやすくなりそうですね。


HSW調整後

HSWを調整。
黒がオリジナル、赤が調整後です。軽め傾向の低音と重たい高音を指標9に寄せつつ隣同士のハンマーの重さのバラツキを修正しました。HSWを揃えると、全域でタッチが揃って感じ、音のアタックも揃って感じられるようになります。


猫による確認作業

念の為、猫たちにも確認してもらいます。


オリジナルのハンマーテール

オリジナルのハンマーテールはツルツル。


テールにスカッチを入れる

テールにスカッチを入れて確実にバックチェッキングするようにしておきます。


ローラーの黒鉛

ローラースキンには黒鉛がびっしりと付いていました。ここに黒鉛が付着しているとFへの影響がとても大きいです。


スキンの黒鉛を除去

ローラースキンに付いていた黒鉛を落としました。これだけでもFはかなり下がります。


ヒールにシムを挿入

SRを下げる位置にヒールシムを挿入していきます。


ヒールクロスの汚れ

ヒールへのシム挿入と同時にヒールクロスの汚れも落としておきたいところです。


ヒールクロスの掃除

ヒールクロスの汚れを落として、PTFEパウダーを施工します。


バランスパンチングクロスの接着

バランスパンチングクロスの奥側に接着剤を塗布したらバックチェックに重りを掛けておきます。接着が乾いたらパンチングを半カットしSRを下げます。


バランスピン磨き
バランスホールの掃除

前後のキーピンを磨き、バランスホールをブラシで掃除。鍵盤のバランスホールは細麺棒にベンジンをつけて掃除します。バランスホールの内側は意外と汚れていて、ここをベンジンでクリーニングすると鍵盤の動きがスッキリします。


ブッシングクロスのヘタリ

よく弾かれる中音付近のブッシングクロスが潰れていて、鍵盤の横振れが大きくなっていました。せっかく弾きやすい重さのタッチに調整しても、鍵盤がブレブレだと弾きにくいでしょう。


古いブッシングクロス

ヘタリの大きい中音のキーブッシングクロスを取り除きます。


鍵盤ブッシングクロス交換

結局、中音のブッシングクロスの大半は交換となりました。


鉛の抜き出し
鍵盤鉛を抜く

事前にタッチを重くしている外側の鍵盤鉛を抜き出しておき、BW基準で新たな鍵盤鉛の位置を決めます。


鍵盤穴あけ
鍵盤穴あけ後

新たに内側に鍵盤鉛を入れることで慣性モーメントが小さくなりタッチは軽くなります。


白鍵キートップの剥がれ

キートップの奥側の接着が剥がれて浮いています。カワイの鍵盤では時々見られます。この状態で弾くとペチペチと雑音が出ます。


キートップを接着

白鍵上面を接着しておきます。


白鍵の欠け

1鍵だけ白鍵の先端が欠けていました。


アクリル樹脂

アクリル樹脂で固めて整形します。


白鍵の欠けを補修

白鍵の欠けを補修。


鍵盤脇の汚れ

たくさん弾かれたピアノは鍵盤の脇が汚れてしまいます。


鍵盤脇の掃除

鍵盤脇の汚れを掃除しました。


事前整調

納品前に事前整調しておきます。


コーヒー

納品時にもう一度、整調を行い完成です。
先生にも整調の一部をお手伝いしてもらい作業を体験して頂きました。
コーヒーありがとうございます!


タッチ調整完了

弾きやすいタッチになって、先生にも喜んで頂けました。
後日メールを頂戴し、生徒さん達も喜んでいるとの事。
このピアノ、タッチ以外にも課題が残っていますので、今後の定期調律の際にそちらも手を入れていく予定です。


グランドピアノの重たいタッチ、標準的なタッチに調整します。
作業のご依頼、お問い合わせは
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