カワイKG-6Cのタッチウエイトマネジメント
非常にタッチの重いカワイのグランドピアノ
KG-6Cのアクションをお預かりして
「タッチウエイトマネジメント」作業を行いました。
昭和49年納品のピアノで、お客様曰く
「少しでも軽くしたいに尽きる...」との事です。
先日無事納品と調整を行い、お客様に弾いてみて頂いた感想は
「良い感じです!結構変わるもんですね」と喜んで頂きました。
今回行った作業を以下の通りです。
BWは軽い鍵盤でも46.5g、
重い鍵盤ではBW55gもあって、とても弾ける重さではありません。
Fは10.5から20。
SRは低音7.5、中音7.75、高音7.5でかなり高め。
ARは低音6.6、中音と高音が6.1。
マジックラインは許容範囲でした。
ウイペンフレンジはプラ製で若干スティックぎみです。
その他フレンジは木製で、
お客様がある程度湿度管理されているようなのでスティックはありません。
ウイペンにはアシストスプリングが付いていて
低音から次高音までは強力にスプリングが効かせてあり
最高音部はスプリングをまったく効かせていないセッティングになっています。
鍵盤鉛は9mmの鉛が低音で1個から4個手前側に入っていて
中音は鉛が入っていなかったり、
アップライトのようにバランス部の後ろ側に1個から2個、
高音も後ろ側に2個から3個の鉛が入っています。
この鍵盤鉛の配置ではどうにもタッチが重くなってしまいます。
レシオが高いので、あがき10.0mmで
打弦距離が49mmにしてあるのですが
それでもまだ働きが大き過ぎる状態です。
ここから中村式タッチウエイトマネジメントを利用して
とてつもなく鍵盤の重い状態を 標準的な重さBW38gになるよう調整していきます。
オリジナル状態のHSW。
低音は重く指標9から指標10.5付近でバラツキが大きく
中音から高音は指標7から指標9でバラツキあり。
HSW調整後(赤)。
指標9でバラツキの無いよう揃えました。
ウイペンにはアシストスプリングが付いています。
アシストスプリングはこのまま生かす方向で調整も出来ますし
取り外してしまう選択もあります。
せっかく付いている部品なので生かすのもアリですが
今回は取り外す事にしました。
理由は弾いていてスプリングのバネ感がタッチに感じられ
タッチにダイレクト感が無くなってしまうので
スッキリしたタッチにする為に取り外す事にしました。
アシストスプリングを全て取外しました。
ウイペン周りではその他に
フレンジがプラ製でスティックぎみとなっているので
全てトルク調整しました。
サポートトップの黒鉛のザラツキをなめして
潤滑の為に塗られたヒールクロスの黒鉛もベンジンで落とし
代わりにPTFEパウダーを施工しておきました。
ウイペンを外したついでに ヒールにシムを挿入しSRを一段階下げておきます。
鍵盤底部に接着剤をつけてから
バックチェックに重りをかけて後方加重で乾くのを待ちます。
乾いてからパンチングを半カットしSRをもう一段階下げます。
上から一段目、二段目が低音で9mmの鉛が2個。
三段目から五段目までが中音で、
鉛が入っていなかったり、アップライトのように後ろ側に入っています。
六段目、七段目は高音で、やはり後ろ側に鉛が入っています。
サイズはいずれも9mmで、FWが小さいかマイナスなので
BWは非常に大きくなっています。
低音の一番外側の鉛と 中音と高音の後ろ側の鉛は全部必要ないので抜いてしまいます。
不要な鍵盤鉛を全て抜き出しました。
写真を省略しますが、この他に Fを下げるための作業を各部に行っています。
HSWを揃え、SRを2段階下げて、必要のない鍵盤鉛を抜いてから
新たな鍵盤鉛の位置をBW基準で決めていきます。 BWは標準的な重さ38gです。
新しい鍵盤鉛の配置です。
タッチを軽くする方向の作業なので
鍵盤鉛を内側に寄せて入れ、動的重さも軽くなるようにしています。
SRを2段階下げてから配置しているので 最小限の鍵盤鉛で済みます。
レシオが下がったので
49mmだった打弦距離は46mmにして、あがき10.0mmで
ちょうど良い働きが出るようになりました。
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2018年10月28日 | カテゴリー:タッチウエイト調整