ペトロフのグランドピアノの鍵盤を軽くする
ペトロフのグランドピアノをお使いのお客様から
「鍵盤が重く、速いパッセージになると弾きにくいので軽くして欲しい」
とのご依頼で、鍵盤の重さを調整しました。
せっかく音色の良いペトロフのグランドがあるのに
もう1台ある電子ピアノばかり弾いているとの事で
これではペトロフが泣いている...
最初に診た段階で
DW 60g 前後ありました。
人によっては弾けなくも無い重さかもしれませんが
60g程あると、長時間弾いていると
ジワジワと手や腕に効いてくる重さです。
調整で55g近辺まで軽くなりましたので
貼付け式の鉛を使い
DW 50g にして、且つ鍵盤ごとの重さのバラツキを修正しました。
LW は 25g 以上確保出来ましたので
違和感なく弾けると思います。
お客様に仕上がりを確認して頂いて、作業完了。
思う存分、ペトロフを堪能してくださいませ。
2014年6月28日
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カテゴリー:ピアノ調律
バットフレンジコードの交換修理
ヤマハのアップライトピアノ、
U3Hのバットフレンジコード(バットスプリングコード)の修理です。
特定の期間に製造されたヤマハのアップライトは
必ずバットフレンジコードが劣化して切れてしまいます。
(かなりの台数が該当します)
これまでに
「何やら紐(ヒモ)のような部品が劣化して切れている」
というので、言われるまま修理に出した方も多いことでしょう。
また、これから修理に出す方も居られるかと思います。
既にフレンジコードを修理なさった方々、
修理してもらう前と後で、
とりわけ何かタッチや音色は良くなりましたでしょうか?
「別に修理前と変わらないなぁ」という方も居られるのでは。
それは文字通り
「フレンジコードのみ修理した」からかもしれません。
それでは
「バットフレンジコードの交換修理(私の場合編)」
を進めていきましょう。
88ヶ所、全てのフレンジコードが切れてしまっています。
白→薄茶→茶→濃い茶
と変色していき最終的にボロボロになって切れてしまいます。
このピアノはフレンジコードが切れているのを知りながら
そのまま使い続けてしまった為に
バットスプリングが前面のダンパーレバーに当たって
折れ曲がっている箇所があったり
1ヶ所は、バットスプリングが完全に折れてしまっていました。
バットフレンジコードが切れると
バットスプリングは写真のように前方に突き出します。
そして最高音部を除く音域には
前面にダンパーレバーがありますので
ここにダンパースプリングが当たって
バットスプリングが曲がったり
最悪折れてしまうのです。
ですから、フレンジコードが切れはじめたピアノは
すみやかに修理してしまうのがベターです。
切れたまま弾いていると余計な修理が増えてしまいます。
折れたバットスプリングを交換します。
スプリングを固定(保持)するヒモは、バットスプリングコードではなく「ピンコード」と呼ばれています。
バットスプリングを交換しました。
肝心のバットフレンジコードを交換しましょう。
現在、業界で一般的になっている
フレンジコードの修理方法と言えば
このようにバットフレンジを
センターレールに残したまま
ハンマーアッセンブリーのみを外して
修理するのが一般的のようです。
この修理方法のメリットは
「修理する側が比較的楽に短時間で修理出来ること」
あとは
「弦合わせが比較的ずれないので納品後の作業が楽」
(実際にはこの方法でも弦合わせは僅かにずれます)
などの理由から、
フレンジをセンターレールに残して修理するようです。
現在私は、フレンジをセンターレールから外して作業します。
理由は、
「フレンジのトルク調整をしてタッチを良くしたい」
からです。
少しの手間で修理後のタッチが良くなるのであれば
お客様にとってもそのほうが良いと思うのです。
全てのフレンジコードを交換していきます。
これでフレンジコードが切れる心配が無くなります。
そしてタッチも改善するために
バットフレンジのセンターピンも交換します。
このピアノの場合
全域に渡りトルク過多になっていました。(バラツキ有)
やはりフレンジをセンターレールから外して
チェックしておいて正解です。
重度のスティックはハンマーレールを前進させ
ハンマーの戻りで確認出来ますが
軽度のスティックは
きちんとフレンジをセンターレールから
外してチェックしないと見逃してしまいます。
いくつかのバットフレンジには
センターピン周りに油の染みのようなものがありました。
おそらく以前の調律師さんが
スティックぎみだったので
何かオイルを噴いたのだと思われます。
つまり以前からバットフレンジは
スティックぎみであったということになります。
この段取りで修理する場合でも料金は高くしたりはしていません。
あくまでもお客様から承ったのは「フレンジコードの修理」で
トルク調整(センターピン交換)ではありませんので。
納品した時に少しでも喜んで頂けたらという気持ちで作業しているだけ。
ハンマーを外しているついでに
針の下入れとファイリングも済ませます。
アクションをお預かりする前に
ピアノの音色の現状を全域に渡りチェックしておいて
「この辺りは上下に7回針入れしておけばいいかな」
「この音域は硬化剤を使うと良さそう」
といった具合に、
そのピアノの音色に足りない部分を修正する
下準備を済ませてしまいます。
過去の経験から、下整音を済ませて
お客様のピアノにセットすると
7割から8割の仕上がりになっています。
残りを出先で微調整していくと音色が作業前より良くなります。
その他には
稼動部の磨き直しや潤滑も済ませます。
雑音の防止、スムーズなタッチにする為です。
概ねこの辺りまでが
私の場合のフレンジコード修理です。
もっとも、ピアノは1台ごとに状態が違いますので
ピアノによって、作業は違ってきます。
バットフレンジコードの交換修理、完成です。
バットフレンジコードの修理ですが
以上のような少しの手間で
タッチも音色も良くなります。
そういえば時々
「フレンジコードが切れていても
ハンマーは戻るし、普通に弾けちゃうけど」
と仰る方が居られます。
確かに、その通りですが
実はバットフレンジコードが切れて
バットスプリングが効いていない状態になると
ハンマーの戻り云々とかではなく
もっと別の大事な部分に影響が出ます。
私のところで修理した方に
それをお伝えすると
「あぁ、なるほど」と納得されます。
今回修理したピアノをご使用のお客様もそうでした。
ですので、バットスプリングやフレンジコードは
いらない子ではありません。
必要な部品です。
フレンジをセンターレールから外して
バットフレンジコードの修理をする。
などと偉そうに言ってますが
実はある時期までは
私もフレンジをセンターレールに残したまま
フレンジコードの修理をしていました。
それである時
尊敬する大先輩の一人が
「フレンジをセンターレールから外して修理したほうが
センターピンのトルクチェックも同時に出来るのでいいですよ」
と仰っていたのを聞いて
ハッと我にかえったのです。
修理作業は、ルーティン化してしまうと
何も考えずに作業を進めてしまいがちです。
「そのやり方で本当にいいのか」
「その修理方法でお客様に満足頂けるのか」
時には立ち止まって考える必要があります。
- 安くて速いが、修理前と何も変わらない作業
- 適正価格で少し納期がかかるけど、音とタッチが良くなる作業
皆さんは、どちらの修理がお好みでしょうか。
私は勿論、2. です。
M様、コーヒー豆ありがとうございます。
バットフレンジコードの交換修理@東京都練馬区
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渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
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2014年6月13日
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カテゴリー:ピアノ修理
グランフィールの取付け(ヤマハ U2)
ヤマハのアップライトピアノ、U2に
グランフィールを取付けました。
グランフィールは、お手持ちのアップライトピアノに
グランドピアノのキータッチと響きを実現する技術です。
今一度、グランフィールの特徴をおさらいしておきましょう。
- 鍵盤を底まで降ろしたあと、少しキーを戻したところで次の音が出せる。
- 連打がグランド並の秒間12から13回可能になる。(通常のアップライトは7回/秒)
- ダイナミックレンジ(音量の幅)が広くなり、小さい音から大きな音まで出せるようになる。
- 鍵盤の挙動がグランドと同様、キーを下げたあと上がる際に、底から押し上げるようになるので指に吸い付くようなキータッチになる。
- 高次倍音が増し、グランドのように華やかな音色になる。(同じピアノなのに今より音が良くなる)
今回、グランフィールを取付けたお客様のお宅は
ご家族全員がピアノを弾く、ピアノ大好きご一家。
グランフィールを取付ける事になった経緯は、
11年前に後付けしたテクニクスの消音ピアノユニットが
電気系のトラブルで壊れてしまい使えなくなった事。
いわゆる「サイレント、消音ユニット」は
「家電」ですから、他の家電製品と同じように
一定の年数経過すると、あっさりと壊れます。
家電ではすっかりお約束のコンデンサー不良。
有名どころでは「ソニータイマー」でお馴染みです。
ここで、いくつかの選択肢があります。
1. 故障した消音ユニットを修理して使う。もしくは新たなユニットを取付ける。
2. 消音ユニットが担っていた役割を電子ピアノで代替えする。
3. これを機に消音ユニットを外し、グランフィールを取付ける。
1. ですが、メーカーにパーツのストックがある内は
一応修理可能です。
しかし修理しても、これもまた時間が経過すると故障します。
どこまで行っても家電で、故障と出費が付きまといます。
新しい消音ユニットを取付けても、やはりまたいつか故障する。
2. 「消音ピアノユニット」は平たく言うと
「電子ピアノ」ですから、なにもピアノに一体化しなくても
電子ピアノ単体機を別途使ったほうが
安く済むのと、電子ピアノとしての性能も良い。
3. コルグ、テクニクスの消音ユニットと
「グランフィール」の共存は
グランフィールの考案者である藤井先生は推奨していない。
(強引に取り付けられなくはないですが、
グランフィールの性能をフルに発揮出来ない懸念が)
消音ユニットを取付けていると、
アコースティック時の性能も
実は若干落ちてしまい、消音時の性能も
電子ピアノ単体機よりいまいち良く無い
どっちつかずの状態になってしまいます。
ならば、生楽器である「ピアノ」の性能を
最大限生かすように、消音ユニットを取り外して
グランフィールを取付けて、
アコースティックピアノの性能を
最大限に引き出そうというのが
「3.」の考え方です。
で、今回お客様は「3.」を選択されました。
聞けば、別のフロアに電子ピアノもお持ちとのこと。
それなら夜用には電子ピアノを使って
アップライトピアノのほうは、グランフィールで
グランド化して楽しんだほうがベターです。
故障したテクニクスの消音ユニット。
今は亡きこのテクニクス消音ユニットには、
「突然大きい音が出る」という致命的なバグがあります。
このバグは今日まで脈々と受け継がれています。
某社の電子ピアノで、
「アップライトのアクションを搭載した電子ピアノ」
というのがありますが
その「アクション搭載電子ピアノ」でも
同様の現象が出ている模様。
アクションの載っていない
普通の電子ピアノではこの現象はありません。
色々とイマイチですな...
11年目にして故障した消音ユニットは、調律の時に取り外しました。
光センサーと言いながら、物理的に鍵盤に触れているタイプ。
棚板もスッキリ。
いったんアクションをお預かりして
グランフィールのパーツを取付けます。
ジャックが素早く元の位置に戻れるように取付けられた
レペティションスプリング。
新たに取付けられたショット&ドロップスプリング。
ハンマーアッセンブリーを外したついでに
針の下入れとファイリングも済ませました。
最低音部の元気がなかったので
最低音部のみ硬化剤を使いました。
アクションにグランフィールのパーツが取り付いたら
ピアノ本体にアクションを戻して
黙々と調整をして仕上げます。
グランフィール機能付きアップライトの完成。
お客様に試弾して頂いたところ
「タッチ感に特に違和感なし → OK!」
「鍵盤の浅い位置でのトリル、連打 → OK!」
それで、一番喜んでいらしたのが
「音が良くなった」ということ。
ショット&ドロップスプリングの「リムショット理論」と
入念に仕上げた「整音」との相乗効果で
音色がかなり良い方向に変わりました。
キータッチだけでなく、音色も良くなるのが
グランフィールの魅力のひとつです。
あと、グランフィールを取付けると
とにかく「弾きやすい」。
これに尽きます。
この U2 は、製造番号110万番台ですが
この時代には国産アップライトにも
まだ「屋根支持棒」が付いていました。
アップライトピアノの「屋根支持棒」、便利です。
グランドピアノの屋根のように、屋根を斜めに開けることが出来ます。
全開ではなく、この「斜めに開く」のがポイントで
これだけで、大分音が良くなります。
グランフィールを取付けましたので
屋根を開放して演奏すると
まさに縦型グランドピアノです。
「グランフィール」、オススメです!
(グランフィールの取付け(ヤマハ U2)@埼玉県狭山市)
↓グランフィールに関しては以下もご参考にどうぞ↓
グランフィール
http://www.piano-tokyo.jp/granfeel.html
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2014年6月2日
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カテゴリー:ピアノ調律, ピアノ修理, グランフィール