グランフィールの取付け(ヤマハU3F)
ヤマハのアップライトピアノ U3F (製番111万台)に
グランフィールを取付け、
アップライトピアノをグランド化しました。
中学生の息子さんが
レッスン先のグランドでは上手く弾けるのに
自宅のアップライトでは上手く弾けないという、
ピアノが上達してくると誰もが打ち当たる問題に直面しているとの事で
グランフィール取付けのご依頼を頂きました。
アップライトピアノは
指をしっかり上げるような大きな動作の
演奏では特に支障はないのですが
キーを上げきらない部分での打鍵が必要な
繊細なトリルや弱音連打を構造上苦手とする楽器です。
底まで下ろした鍵盤を元の高さまで戻していく過程で
鍵盤やハンマーが限りなく元の位置に戻っているのに
ジャックの先端はバットスキンをズリズリと擦りながら
いつまでも戻らず、完全に鍵盤を元の高さに戻したところで
ようやくジャックは元の位置に戻ります。
ジャックが戻り、スタート地点に待機していてくれないと
ジャックはハンマーバットを蹴り出すことが出来ず
そうすると鍵盤を叩いているのに音が鳴らないという状態に。
このアップライト特有のジャックの動作が
連打やトリルを弾き難いものにしています。
これらアップライトのジャックの動作は、
グランドピアノには搭載されている3つの部品↓
- レペティションレバー
- レペティションスプリング
- ドロップスクリュー
↑これらがこれまでアップライトには備わっていなかった為に
トリルや連打がしにくかったのです。
これを解消するのが「グランフィール」で
アップライトピアノに先の3つの部品に相当する部品を取付け
アップライトをグランドピアノ化しようという技術になります。
初回訪問時に調律をした後、整調を今一度綺麗に揃え直しました。
そしてそのままアクションをお預かりさせて頂き
グランフィールパーツの取付け、特殊加工や各種再調整など済ませて
仕上がったら納品及び調整する流れになります。
レペティションスプリングが取り付いた状態。
アップライトピアノの長い歴史の中で
必要とされながらなかなか実現することのなかった部品が取り付きました。
ドロップスプリングが取り付いた状態です。
ドロップスクリューの役割と
ハンマーの弦離れを加速することで、
アップライトの劣化した響きを
高次倍音豊富なグランドピアノの”あの”響きにすることを実現します。
また事前の調律訪問時に88鍵の音色バランスをチェックした際
中音が荒れた音色になっているのに対し
低音、高音は全く元気がないアンバランスな状態でしたので
ハンマーの針入れ、ファイリング、コテ当てなどの下処理をしておきました。
硬化剤はおそらく不要な感じです。
納品時に再度音色を整える段取りとなります。
またグランフィールパーツの取付け作業では
単に部品を追加するだけではなく
「ハンマーバット加工」という作業が必須となっております。
これは先に述べました、
ジャックがいつまでも戻らないという
アップライトの困った動作を改善し
条件をグランドに近づけるのに必要な作業になります。
今回はお客様のご要望で
フロントパンチングクロスを、グランドピアノ用の
「ホワイトパンチングフェルト」に交換しました。
国産アップライトにもともと使われている腰の無いパンチングを
ホワイトパンチングフェルトに交換する事で
打鍵した際にタッチがしっかり決まり、
国産ピアノの芯の無い音にしっかりと力強さが加わり
音の立ち上がりが速くなりますので
グランフィールとの相乗効果で
ワンランク上の音色とタッチのピアノになります。
整調を再確認しつつ、
レペティションスプリングとドロップスプリングの調整を済ませ
グランフィールピアノの仕上がりです。
事前に処理した整音の下処理は
概ね想定通りで、ほとんど出先での修正は不要でした。
落ち着いているのに華があり深みのある中音セクション、
最低音、最高音に向かうにしたがいタイトな鳴りに。
この感じです。
鍵盤を戻しきらない位置での打鍵が可能になり
トリル、連打も容易に弾けるようになりました。
またレンジが広がりピアニッシモは出しやすく、
鍵盤の追従性も、さながらグランドといった動作を再現出来ています。
嬉しいのは、タッチだけではなく
音の「響き」までグランドに近づいている事。
グランフィールの隠れた特徴の一つです。
今回のお客様と同じ様に
アップライトの性能に限界を感じて居られる方、
グランフィールがその悩みを解消してくれます!
さらにこちらもお客様のご要望により取付けた
ピアノ専用除湿器「ダンプチェイサー」。
今年の梅雨は長雨だったことにくわえ
梅雨があけても連日湿度の高い日が続いております。
こちらのお宅でもエアコンのドライ運転をするも追いつかない為
ダンプチェイサーを取付けました。
湿度の高い状況にピアノを置いていると
タッチは重くなり、音色はもっさりしてしまいます。
長期的には反対側の季節(秋、冬)の「乾燥」との繰り返しにより
ピアノを痛めつける事になってしまいますので
くれぐれも湿気には気をつけたいところです。
取付けたダンプチェイサーは
エアコンと併用して頂くとより一層安心です。
グランフィールの取付け(ヤマハU3F)@東京都世田谷区
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
E-mail info@piano-tokyo.jp
url http://www.piano-tokyo.jp/
weblog https://www.piano-tokyo.jp/blog/
2015年7月29日
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カテゴリー:グランフィール
ヤマハC3Xの調律と調整
常連のお客様がピアノを買い替えたので調律に訪問。
真新しいヤマハC3Xです。
作業に入る前にざっと弾かせて頂きましたが
なんかタッチがスッキリしません。
お客様曰く
「たぶん販売店がきちんと出荷調整してない感じです。
どうせ渡辺さんに全て調整し直してもらうので
サービス調律だけしてもらってます(笑)」
との事でした。
お客さんに全て見通されてる販売店、なんだかなぁ...
調律カードによると納品時のサービス調律が約3ヶ月前で
A=442Hzで調律されたと記載されています。
3ヶ月後のこの日、ピッチを計ると
A=439Hzまで低下してました。
新品ピアノは張られている弦が若く柔軟性に富んでいるので
数年は猛烈にピッチが下がります。
これが完全に落ち着くのには、半年ペースで調律して
早くて3年、場合により5年くらいかかります。
しばらくはマメな調律が必要になります。
http://www.piano-tokyo.jp/faq030.html
「整調(せいちょう)」、あまりというか殆ど手付かずな感じでした。
「(要)鍵盤調整の見直し」な状態。
バランスピンとフロントピンは
新品ですのでさすがに錆はありませんが
念のため薬品でクリーニングしてから潤滑処理しておきました。
鍵盤のバランスホールとフロントのクリアランスを
適正なトルクとクリアランスになるよう調整。
他に気になったのは、レペティションスプリングが
非常に弱く、鍵盤によってはまったく効いてませんでしたので
全鍵スプリング圧を調整し直しました。
せっかくのグランドピアノなのに
レペティションスプリングが効いていないと
連打、トリルが上手く弾けません。
その他、多くの整調工程を見直して
午前から始めた作業も気付けば夕方でした。
出荷調整がきちんとされていない新品ピアノは
ある意味、10年以上調律していないピアノ並の作業が必要です。
朝、お伺いしたときには
ダウンウェイト60g前後でしたが
作業後はDW55g前後と、ヤマハの標準的なダウンウェイトになりました。
音色ですが、この「X」シリーズになってから
いっときのC3より幾分良くなってます。
雑味が無くなったいうか、素直に歌う、そんな印象です。
お客様との打ち合わせにより
今後鍵盤のウェイトのバラツキを揃える調整や
その他カスタムチューンを予定しております。
C3Xがどんな風に変化していくか、今後が楽しみです。
ヤマハC3Xの調律と調整@神奈川県川崎市
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
E-mail info@piano-tokyo.jp
url http://www.piano-tokyo.jp/
weblog https://www.piano-tokyo.jp/blog/
2015年7月23日
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カテゴリー:ピアノ調律
タッチレールの取付け(カワイNX-40)
「タッチレール」取付けのご依頼が増えております。
タッチレール(TouchRail)は、
グランドピアノの重たい鍵盤を標準的な重さまで軽く出来る
グランドピアノ専用のタッチ軽量化ツールです。
今回取付けをご依頼頂いたピアノは
カワイのNX-40です。
お客様によると
このNX-40を購入してから10年以上
重たい鍵盤に我慢しながら弾いてきたけど、もう限界!との事。
ダウンウェイトを計ってみると
- 低音セクション : 70g(バラツキあり)
- 中音セクション : 65g(バラツキあり)
- 高音セクション : 65g(バラツキあり)
重いですね、カワイは...
鍵盤鉛による調整ではなく
タッチレールをお選びになった理由をお伺いすると
「穴をあけたり等、ピアノに手を加えたくないので」という事でした。
確かにタッチレールは一部の例外を除いて
基本的にピアノ側に一切の加工を必要としませんので
お客様のご希望に添えます。
初回訪問時に「調律」「整調」「タッチレール用のデータの採寸」まで行い
タッチレールが出来上がったら、再度お伺いして取付けという段取りになります。
鍵盤押えのあった場所に置き換えでタッチレールを取付けます。
取付けはたったこれだけ。シンプルです。
あとはスプリングキャップを回しながら
1鍵ごとにダウンウェイトを調整していけば完了です。
タッチレール取付け後のダウンウェイトは
- 低音セクション : 55gから51g
- 中音セクション : 50g から49g
- 低音セクション : 48gから47g
と元の状態から15g前後軽くなりました。
最低音部のダウンウェイトを55gに設定したのは
アップウェイトとの兼ね合いからです。
アップウェイトは25gから30g確保出来てます。
お客様に軽くなった鍵盤をチェックして頂き作業完了です。
グランドピアノの鍵盤が重くてお悩みの方、
タッチレールの導入を検討してみては如何でしょうか。
標準的な重さの鍵盤は、
鍵盤の重さを意識することなくコントロール出来ますので
演奏に集中することが出来るようになります。
グランドピアノ専用タッチ軽量化ツール「タッチレール」に関しては
以下のページも参考にどうぞ↓
http://www.piano-tokyo.jp/touch-rail.html
タッチレールの取付け(カワイNX-40)@神奈川県横浜市
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
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2015年7月6日
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カテゴリー:タッチレール
タッチレールの取付け(ヤマハC5L)
グランドピアノのタッチウェイト軽量化ツール、
「タッチレール(TouchRail)」を
ヤマハのC5L、製番580万台に取付けました。
ご依頼者様によると、鍵盤が重く
ピアノを練習していて1時間を過ぎたあたりから
手や腕が張ってしまい辛いので軽くして欲しいとの事です。
現状では
- 低音セクション : 65g
- 中音セクション : 60g
- 高音セクション : 55g
といったダウンウェイトです。(バラツキあり)
現代の標準的な重さは50g程度ですから、少々重いようです。
特に低音から中音にかけて、
もう少し軽いと演奏が楽になると思います。
調律を済ませた後、あらためて「整調(せいちょう)」を一から見直します。
十分な整調がされていないピアノは思いのほか多いもので
じっくりと調整していくと、それだけで数グラム軽くなるピアノが多いです。
一日目の作業は調律と整調。
それとタッチレールのデータの採寸。
タッチレールはお客様のピアノ一台ごとにオーダーで製作されます。
鍵盤の割り付けを綺麗に写し取って、
それを元にお客様のピアノ専用のタッチレールが作られます。
タッチレールが出来上がったら、再度お伺いして取付け、調整作業です。
お客様からのご要望で、
良い機会なのでピアノを少しグレードアップしたいとのことで
ヤマハ純正のフロントパンチングクロスを
Wurzenのホワイトパンチングフェルト・コニカルに交換しました。
ホワイトパンチングに交換すると
音の立ち上がりが速くなり。音の力強さが増します。
パンチングは地味な部品ですが、良質なものに交換すると
音やタッチが変化します。
既存の鍵盤押えがあった場所に置き換えで
タッチレールを取付けます。
オリジナルの鍵盤押えとネジを保管しておいて頂ければ
いつでも元の状態に戻すことが出来ます。
タッチレールのインストール作業は
シンプル且つスピーディーに完了します。
スペーサーチューブを最適な長さにし、
適切な位置にタッチレールをセットします。
この時点で全体のタッチが軽くなります。
あとは鍵盤鉛調整の要領で進めていきます。
コンプレッションスプリングのスプリングキャップを回しながら
鍵盤ごと個別に圧を調整しダウンウェイトを調整します。
調整後のダウンウェイトは
- 低音セクション : 52g、51g、50g
- 中音セクション : 49g、48g
- 高音セクション : 48g、47g
となりました。
全体が10g前後、軽くなっています。
また鍵盤ごとに調整出来ますので
重さのバラツキも修正可能です。
概ねスタインウェイと同じウェイトまで軽くすることが出来ました。
アップウェイトは30gから35gほど確保出来ておりまして
これは作業前のアップウェイトとさほど変わっていません。
タッチレールはアップウェイトへの影響が少ない為
ダウンウェイトは軽くなりつつ
鍵盤の追従性はしっかり保たれます。
お客様に試して頂きます。
「かなり軽くなりますね!」との事で満足頂けました。
今後は鍵盤の重さを気にする事無く、演奏に集中出来そうですね。
グランドピアノ専用タッチ軽量化ツール「タッチレール」に関しては
以下のページも参考にどうぞ↓
http://www.piano-tokyo.jp/touch-rail.html
タッチレールの取付け(ヤマハC5L)@東京都台東区
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
E-mail info@piano-tokyo.jp
url http://www.piano-tokyo.jp/
weblog https://www.piano-tokyo.jp/blog/
2015年7月5日
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カテゴリー:タッチレール