APOLLO UG122DX、タッチの調整

アポロ UG122DX
鍵盤が重く、小学校低学年の娘さんが
30分も弾いていると、手が疲れてしまうので
軽くならないものかというご相談で
状態のチェックでタッチ調整作業に伺いました。
納品されて間もない
アポロピアノ UG122DX で、
納品調律に来てくれた販売店の調律師さんに
鍵盤を軽くしてくださいとお願いしたところ
確かになんとなく軽くはなったが
ピアニッシモで弾いた際に
音がブツッと途切れてしまうようになったそうです。
状態を拝見してみると
ダンパースプーンの掛かりは
ハンマーがほぼ現に到達する当たりで
ようやく掛かるような調整がされていて
それ故、ごく弱く弾いた際に
ダンパーが上がりきらない状態に。
ひとまずダンパースプーンの掛かりは
通常通りダンパーが機能する位置に修正して
あらためてピアノを試弾してみると
ダンパーペダルを踏まないで弾いた時には鍵盤は重く
ダンパーペダルを踏んでいる時には鍵盤は軽いようです。
ダンパースプリングをチェックすると
スプリング圧が強過ぎるのが原因のようでしたので
全てのダンパースプリングを現状より弱めにし
スプリングの頭に潤滑をしたところ
普通に弾けるくらいの重さの鍵盤になりました。


鍵盤鉛の肉抜き

もう一点、気になったのは
白鍵はセオリー通り、バランスピンの奥側に
直径10mmの鉛が一つ入れてあるのですが
黒鍵は何故か手前側に
同じく直径10mmの鉛が入れてあります。
おそらくメーカーがダウンウェイト基準で揃えたので
黒鍵の手前側に鉛を入れる事になってしまったのかもしれません。
このせいでいくつかの黒鍵で、フロントウェイトが大きく
バランスウェイトが小さい状態となっていたので
とくに問題のある黒鍵8本の鍵盤鉛を肉抜きしたところ
バランスウェイト40gでいい感じに弾きやすくなりました。
その他、潤滑が必要と思われる部分に
潤滑がなされていなかったので
前後キーピン、キャプスタンの頭、ダンパースプーン、ダンパーレバー、
あと、バット以外のフレンジにCLPを僅かに塗布して
ほぼ普通の弾き心地のピアノになりました。
それと鳴りが悪く、あまりにモコモコした音色でしたので
少し明るい音色に調整しました。
明るい音色のほうが、弾き手の受ける印象として
タッチが軽く感じられる傾向があるからです。
屋根ロングヒンジと下パネルからの雑音対策もして作業完了です。

 

渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
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グランフィールの取付け(カワイLD-77)

カワイのアップライトピアノLD-77に
グランフィールを取付け、グランド化しました。
どうしてもグランフィールが取付けたい!というお客様は
まずカワイに頼んで消音ユニットを取り外してもらい
ダンパーストップレールを取り寄せて
元通り取付けて、ピアノを素の状態にしました。
そして外してしまった消音の代替に
電子ピアノを購入なさって、準備万端で
グランフィール取付け依頼を頂戴した次第です。
消音ユニットは、アコースティックの性能が低下してしまうので
いずれにしても今回外せた事は良かったと思われます。

消音ユニット
お客様からは
「消音ユニット、取り外してもらいました!」
とご連絡頂いてましたので
綺麗さっぱりな状態なのだろうなと思い
アクションのお預かりにお伺いしましたが
下パネルを開けると、消音パーツはそっくり付いたまま?
カワイの方が外したのは
消音バー(ストッパー)とセンサーのみで
その他の部品は残したままの状態になっていました...
ストッパー無き今、これらの部品を残しておく意味がないので
全て取り外しました。

カワイのバット
バットには、しつこく消音の部品が残ってます。
キャッチャーとバットを跨ぐ格好でアクチュエーターがついています。
接着で取付けてあるだけなので、これも外します。
重さを計ってみると、この部品は 1.3g あって、
グランドほどではないですが、アップライトでも
僅かながらタッチへの影響が考えられますので外します。

カワイのバット形状
黒い樹脂製アクションになってからのカワイのバット形状は
ベージュの樹脂アクション時代よりは、少しましになっていますが
やはりあまり理想的な形状とは言えません。
またバットスキン、キャッチャースキンとも合皮なのは相変わらずで
この合皮もベージュのプラスチックアクションのときの
合皮よりは幾分ましにはなっているようですが
やはり本革にはおよびません。
キャッチャースキンの合皮は摩擦が少なく
バックチェックで咥えきれずにリバウンドしてしまう傾向があります。
今回はバットスキンだけ本革に交換しますが
樹脂製アクションのカワイピアノをお使いの方は
バットスキンとキャッチャースキンを本革に交換すると
アクションの動きが改善されます。
幸いグランフィールでは「バット加工」が
取付け作業の中で必須工程になっていますので
バット加工でバットの形状を修正し、ついでにスキンも交換します。

バットスキン
バットスキンを革のスキンに交換するため
スキンを必要な数カットします。

レペティションスプリング
ジャックの手前には
グランドピアノのタッチに不可欠な
レペティションスプリングが取り付きました。

ショット&ドロップスプリング
ハンマーシャンクの手前には
ドロップスプリングが取り付きました。

フロントパンチングクロス
グランフィールのオプションとして交換なさる方が多い部品。
今回もお客様のご希望で交換しました。
フロントパンチングクロスを
アップライトの小ぶりで柔らかいものから
グランド用の一回り大きくしっかりしたものに。
音の立ち上がりが早くなり、音に芯がはいります。
整音はおそらく出荷時のままと思われますが
中音セクションはしっかり針が入っていて
いい音が出ているのですが
次高音あたりからあきらかに針入れが少なくて
最高音にかけて、ガンガンと音が潰れてしまっていて
耳が痛くなるような響きになっています。
「カスタムボイシング」という名のカワイの整音がされたピアノは
以前にもこの傾向のものに出会った事があります。
中音から最高音にかけて、もう少し綺麗に音色が続くように
針入れをして、少しだけファイリングで
ハンマー形状を整えておきました。

グランフィールの調整
整調、スプリング調整、再度の整音をして
グランフィールの調整が完了です。
このピアノ、主に子供さんがご使用で
これまでグランフィール取付け前のアップライトで練習していて
本番のグランドでは鍵盤を底まで下ろしきれず
音が抜けてしまうことがあったそうです。
今回グランフィールを取付けたことで
グランド同様、レペティションスプリングが搭載され
鍵盤の底面にグランドピアノと同じ様に
適度な抵抗感を得られるようになりました。
このピアノで練習していれば
本番でもタッチの違和感をさほど感じずに弾けると思います。
レペティションスプリングの恩恵は
鍵盤が下りるときの底面での抵抗感だけではなく
底まで下ろした鍵盤を元の高さまで上げようとする際に
やはりグランドピアノの鍵盤と同じように
底から押し上げるような感覚を得られる事です。
これにより「指に吸い付くようなタッチ」が得られ
鍵盤底面でのコントロールがしやすくなります。
カワイ LD-77というピアノは
チレーサ響板を採用しているのと
「熟練した職人が云々...」といった整音が売りの筈ですが
前述のように次高音から上の整音がいまいちで
音はアタックがガツガツして潰れてしまって
響板の良さが生かされていませんでしたが
今回、次高音から最高音までの整音をやり直したところ
上品な響きのピアノになりました。
最低音部は少しおとなし過ぎで
ハンマーの毛羽立ちから判断し
マイクロフィニッシングフィルムでシューシャインしたところ
ちょうどいい音になりました。
比較的良質なハンマーが付いていて
ハンマー自体が新しく反応がいいので
ケミカルなどは使わなくても
狙った音色に持っていくことが出来ました。
LD-77とグランフィールの組み合わせ、
タッチはもう少し調整の余地がありそうです。
一ヶ月後に、再度調律と調整に伺う事になっているので
もう少し弾き心地の良いタッチに調整出来そうなので
調整メニューを検討中です。

 

グランフィールの取付け(カワイLD-77)@東京都小平市

 

 

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