グランフィールの取付け(KimBall)
キンボール(アメリカ)のコンソールピアノに
グランフィールを取付けました。
以前こちらで修理調整したピアノです。
グランフィールは
お手持ちのアップライトピアノをグランドピアノ化し
アップライトのデメリットの多くを解消する技術です。
このキンボールは
グランフィールの取付け要件を満たしていないのですが
お客様のどうしてもグランフィールを付けたいという
願いを叶えるべく工夫をし取付けました。
オリジナル状態では
ダンパーストップレールが付いていないので
これを追加しなければならないのと
極端にコンパクトなアクションで
ハンマーシャンクの見えている部分で
最低音部で64mm
最高音部で53mmしかありません。
ドロップスプリングの作用面を
よく考えて取付けないと動作に影響しそうです。
ジャックはセンターピンから先端までで
68mmと意外にも長さが確保されていますので
レペティションスプリングのほうは
問題なさそうです。
このように、このピアノは
ダンパーストップレールが省略されていて存在しません。
グランフィールの2種類あるスプリングのうちの一つ
ドロップスプリングは
ダンパーストップレールに対して取付けますので
ダンパーストップレールを後付けする必要があります。
グランフィール取付キット。
用意したのはスプルースの角棒。
某国産ピアノのラワンと違い
しっかりしていて安心感があります。
両端のブラケットは挟み込みで固定し
中間二ヶ所はL型アングルを立てて固定しました。
ブラケットは穴開けも考えたのですが
出来るだけ不必要に穴をあけたくないのと
ブラケット破損のリスクを避けるために
挟み込みとしました。
レールはさらにアルミのアングルで補強し
季節変化や経年変化の影響を受け難いよう対策しておきます。
ダンパーストップレールに
ドロップスプリングを取付ける為の位置決めをし
ボール盤に自作の治具をセットし穴開けします。
レギュレチングレールも同様に作業します。
ダンパーストップレールへのドロップスプリングの取付け、
レギュレチングレールにレペティションスプリングの
取付けが出来ました。
この二種類のスプリングが
これまでアップライトピアノに足りなかった部品です。
この他にここでは詳細をお見せ出来ない
グランド化する為の作業をいくつか行っています。
ジャックの手前に
レペティションスプリングが追加されました。
これによりグランドピアノと同じように
打鍵後、鍵盤を上げていく過程で
まずはジャックが先に元の位置に戻り
ハンマーは後から戻るという順番となって
鍵盤を底面から少し戻した位置での
打鍵が可能になります。
そしてレペティションスプリングの追加により
ハンマーはやはりグランド同様
ダブルエスケープメントするようになります。
こちらも新たに追加された
ショット&ドロップスプリング。
アップライトの物足りない響きの原因だった
ハンマーの弦離れを加速し
グランドピアノの華やかな響きを実現します。
また先のレペティションスプリングにより
ダブルエスケープメントするようになった
ハンマーの動きを制御する役目も兼ねています。
参考までに
右のアクションは120cmクラスのアクションで
左がキンボールのアクションです。
大分コンパクト化されていることが分かります。
アクションにグランフィールパーツの取付けと
各種調整、加工が済んだら
お客様のピアノにセットして調整作業を行います。
私の場合は、午前中から作業をはじめて
夕方くらいまでじっくりと調整する場合が多いです。
グランフィールの調整のみならず
全体整調も全て見直してピアノの精度を上げたいのです。
調整作業が全て済み
お客様に試して頂きます。
「音がはっきりしました!」
確かに。私の受けた印象では
単音でも高次倍音が増したためか
力強い音になっていますし
和音になると、さらに分厚い音が返ってきます。
なんとなく腰が無く頼りなかったタッチも
鍵盤底面でレペティションスプリングが効いてくれることで
弾きやすくコントロールがしやすくなっています。
タッチ、音の響き、ともに
1ランク上のピアノになったようです。
「取付けて良かったです!」と喜んで頂けました。
アップライトピアノに
グランドピアノのタッチと響きを実現する
グランフィール。
「家のアップライトピアノが
グランドピアノのようなタッチや響きだったなら...」
そんな願いをグランフィールが叶えます。
グランフィールの取付け(KimBall)@東京都杉並区
「グランフィール」については
以下のページに詳細を掲載しております↓
http://www.piano-tokyo.jp/granfeel.html
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
E-mail info@piano-tokyo.jp
url http://www.piano-tokyo.jp/
weblog https://www.piano-tokyo.jp/blog/
2015年3月8日
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カテゴリー:グランフィール
C3Bの鍵盤の横振れ修正や白鍵貼り替えなど
ヤマハのグランドピアノ、C3Bの鍵盤まわりの修理調整です。
オーナー様はピアノの先生。
何年も前から鍵盤のガタ(左右のぶれ)が酷いので
修理をオススメしてあったのですが
ようやく重い腰を上げ直すことになりました。
現状の問題点は
- ブッシングクロスがヘタり、鍵盤の横ぶれが酷い
- 象牙調白鍵(象牙ではない)の汚れが酷い
ピアノ教室ということもあって使用頻度が高い為
ブッシングクロスが潰れてしまい
鍵盤手前部分の横ぶれが大きくなり
演奏時、隣の鍵盤と接触し
カチャカチャと雑音が出ています。
鍵盤が左右に暴れるため
打鍵時もフラフラと定まらないタッチになっています。
使用頻度の高い、中音セクションが特にガタガタです。
製番400万台のヤマハのグランドですが
この辺りまでの象牙調鍵盤は
写真のように汚れやすいです。
今回は一般的なアクリ白鍵に交換することになりました。
アクリの白鍵であればメンテナンスも楽で
何年経っても汚れ難く扱いやすいです。
機能面からブッシングクロスの貼り替えをしますが
鍵盤をお預かりするついでということで
白鍵の貼り替えも同時に済ませることになりました。
併せて黒鍵脇の塗装の剥がれも
黒鍵専用塗料を使い塗り直しておきます。
ブッシングクロスを張り替えたら
専用のコテと工具でクリアランスを調整します。
0.5mmくらいでいいのですが
使用状況を考え0.3mmと少しタイト目にしておきました。
スティックを起こさないギリギリのところにしておきます。
88鍵が同じ隙となるよう慎重に調整します。
鍵盤の横ぶれが無くなりカチッとしたタッチになりました。
白鍵は真っ白に。地味に木口も交換してあります。
黒鍵の塗装の剥がれも無くなりました。
お客様に仕上がりを確認して頂きます。
「真っ白!」「ガタガタしない」
とOKを頂戴しました。
因にこの製番の黒鍵は
表面がテカテカしてくるのですが
白鍵がアクリになって艶があるので
黒鍵のテカリも気にならなくなりました。
鍵盤の横ぶれやガタが大きいと感じる方は
ブッシングクロスの状態を
一度、調律師さんに確認してもらっては如何でしょうか。
C3Bの鍵盤の横振れ修正や白鍵貼り替えなど@東京都府中市
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
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2015年3月8日
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カテゴリー:ピアノ修理
たくましいお客様
常連さん(奥様)から
「ペダル(ダンパー)が効かなくなってしまったので
直し方教えてください!」とのメールが。
メールに以下の4枚の写真に解説を添えて返信差しあげました。
2回ほどのメールやりとりで
「直りました!」
との返信が。
ピアノは一見ブラックボックスのようですが
外装を外して冷静にじっくり観察すると
どこで問題を起こしているか
調律師でなくとも理解出来る症状は多々あります。
そしてちょっとだけ
やる気、勇気、元気を出して
挑戦すれば直せる症状も少なくありません。
久しぶりにお客様から元気を貰いました。
いっぽうの私はと言うと
十年に一度くらいの想定外の事態に陥り
(これを俗に「やらかした」とも言う。
N先生、F先生、スミマセン m(_ _)m)
思いがけず時間が出来たので
タッチ調整鉛に超強力両面テープを貼り直す
地味な作業をやってます。
以前この鉛を使用していたピアノから
とある事情で取り外したもので
これを再利用するのにテープを貼り直しています。
愛用しているタッチ調整鉛は
S先生のところのもので
こちらの鉛は、使われている両面テープが非常に強力なものなので
他所のタッチ調整鉛だと
早ければ1年で剥がれてしまう事もありますが
こちらのは何年経っても剥がれることもなく気に入っています。
さすがに一度貼って剥がした場合は
そのままでは使えないので
時間のある時にテープを貼り直しています。
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2015年2月24日
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カテゴリー:ピアノ調律, その他
グランドピアノの鍵盤の重さを調整(ディアパソン)
ディアパソンのグランドピアノの
タッチウェイト調整をしました。
機種は 183-G です。
お客様から作業のご依頼のメールを頂戴し
「とにかく重くて弾けないので、軽くして欲しい」
との事でした。
ご自身で10円玉を使いダンパーを踏んで
ダウンウェイトを測ったところ
全域約70グラムくらいだそうです。
色々お伺いしたところ
- これまで何人かの調律師さんに鍵盤を軽くしてもらったが改善しない
- 前回来てもらった調律師さんに鉛を追加してもらったが一向に軽くならない
そんな状況のようです。
本日お邪魔してピアノを少し弾かせて頂き
すぐにタッチが重くなっている
おおよその見当がつきました。
今回のピアノの場合
慢性的な湿気によるスティックが主な原因だと思われます。
鍵盤を下ろすときのもっさりした抵抗感と
下ろした鍵盤が上がってくる際の頼りなさが
それを物語っています。
ピアノ部屋は一階で
エアコン無し、除湿器無し、
聞くとやはり除湿などはした事が無いご様子。
納品から何年も
梅雨時、夏場の湿気にさらされ続け
冬の乾燥したこの時期になっても
スティック状態から抜け出せない状態となっています。
軽度のスティックの場合
冬になると調子を取り戻す場合がありますが
慢性化している場合は
スティック状態から抜け出せないケースも多いです。
午前中いっぱいは
フリクションロスを減らす作業をして
お昼の段階で 70グラムくらいあったDWは
60グラムまで軽くなりました。
アクションを正面から見ていた感じでは
全て木製のアクションに見えたのですが
後ろ側を見ると
ウィペンフレンジはプラスチックでした。
プラのフレンジはスティックを起こしやすいのと
タッチ感を考えると木製フレンジに交換したほうがよさそうです。
今回はひとまず潤滑で済ませます。
これは前回作業した方が追加したという鍵盤鉛。
追加したという鉛は
88鍵、横一列に取付けてありました。
通常は鍵盤ごとに取付ける位置が違ってくる筈ですが。
そしてピアノ全体がスティック状態のまま
鉛を追加している為
ダウンウェイトは軽くなっておらず
下りたあとの鍵盤は
スローモーションで上がってくる状態になっていました。
午後は整調の見直し作業をして
さらに5グラムほど軽くなりました。
午前中の作業とあわせて
トータル15グラム軽くなり
70グラムあったDWは、55gとなりました。
頼りなかったアップウェイトも
25グラム以上確保出来ました。
追加されていた鉛はとりあえず付けたままにしてありますが
これは外してしまってもいいかもしれません。
そうすると、もう少し
アップウェイトが出て、弾きやすくなりそう。
仕上がりをお客様に確認して頂きます。
「軽い!軽いです!」
大変喜んで頂けました。
70グラムから55グラムになりましたので
劇的に軽く弾きやすく感じると思います。
「音色も明るくなったみたいです!」
アクション稼動部のロスを取り除きましたので
部品の走るスピードが速くなり
結果「鳴り」がかなり良くなって
音量が増し、音色も明るくなりました。
透明感のある音が出ていて、なかなか良いピアノです。
このピアノは鍵盤を重くしている原因が見立て通りで
調整に対する反応が素直でしたので
比較的容易に15グラム軽くすることが出来ました。
もしあまり変化しない場合は
別の方法をいくつか考えていたのですが
とりあえず調整のみでいけそうです。
グランドピアノの鍵盤の重さを調整(ディアパソン)@埼玉県川越市
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
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2015年2月3日
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カテゴリー:ピアノ調律, ピアノ修理
グランフィールの記事を整理
ブログのグランフィール取付け関連の投稿が
散らばってしまい探し難いので、1ヶ所にアーカイブ。
以下のページからご覧頂けます↓
http://www.piano-tokyo.jp/granfeel_archive.html
グランフィールの取付けを検討なさっている方の
参考になれば幸いです。
渡辺ピアノ調律事務所
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E-mail info@piano-tokyo.jp
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2015年2月2日
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カテゴリー:グランフィール
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