小型のグランドピアノを弾きやすくする為の工夫
ヤマハのコンパクトなグランドピアノ、C1-SGの
鍵盤を弾きやすくする為の調整をしました。
午前中に定期の調律作業を済ませ
午後からそれらの作業に着手です。
こちらのC1-SGは
納品された時点では非常に鍵盤が重かった為(DW60gから65g前後)
お客様からのご要望で
以前、鍵盤を軽くするための調整を行い
現在は標準的な重さ
「ダウンウェイト50g(リフトウェイト25g以上確保)」に仕上がっています。
DWが50gとなって、調整の前の状態と比べると
格段に弾きやすくなりましたが
あともう一歩、弾きやすくしたい感触が残っています。
鍵盤を下ろす時に僅かに「押し込む感触」が感じられます。
もっとスムーズに鍵盤が下ろせたなら
コントロールしやすくなる筈です。
そこで今回は
「キャプスタン」をヤマハのオリジナルから
スタインウェイの純正品に交換しました。
キャプスタンは、鍵盤の奥側に取り付いている
金属製のネジのような部品です。
アクションの下端となるウィペンを押し上げる
小さいけれど大切な役割を担う部品です。
鍵盤とアクションの唯一の接点ですので
その意味でも非常に重要なパーツと言えるでしょう。
ヤマハ(シルバーの方)のキャプスタンの頭の形状に注目してみると
「平たい」頭の形をしています。
いっぽうのスタインウェイのキャプスタンの頭は
「絶妙な丸み(アール)」を帯びています。
この「丸み」が鍵盤のコントロール性を向上させるのに貢献します。
ボディーの小さい(短い)グランドは
本体のサイズだけでなく
中におさまっている鍵盤の長さまで短いのです。
鍵盤は上下運動ではなく
バランスピンを支点にした回転運動です。
鍵盤の長い大きなグランドピアノであれば
鍵盤を底まで下ろした際の角度は小さくてすみますが
短い鍵盤で同じ量(約10mm)下ろした時
鍵盤の傾斜は、長い鍵盤のそれと比べ
急な角度になってしまいます。
また、短い鍵盤は長い鍵盤をくらべ
梃子(てこ)の面でも不利になります。
この時、キャプスタンの頭にちょうど良い丸みがあれば
短い鍵盤の短所を少しカバー出来るのです。
88個全てのキャプスタンを交換しました。
キャプスタンの交換後
試弾した印象は、作業前に想定していたのとほぼ同じ。
鍵盤をグッと押し込む感じが軽減されています。
鍵盤が上面からスタートし
底面に到達するまでの感触に違和感が無くなり
コントロールがしやすくなってます。
ヤマハのA1、G1、C1、G2、C2、辺りでは
特に体感しやすいと思います。
今回はキャプスタンごと交換しましたが
キャプスタンの頭の丸みだけを変える事が可能な
アタッチメントもありますので
そちらを使うのでも良いと思います。
また、ピアノがきわめて新しいこともあり
キャプスタンのみを交換しましたが
年数の経過したピアノで
ウイペンのクロスにえくぼが出来ていたり
消耗が激しい場合は、クロスをフラットに修正するか
新しいクロスに張り替える作業を同時に行うと
キャプスタンが滑らかにウィペンを持ち上げてくれます。
O様、お菓子ありがとうございました。
小型のグランドピアノを弾きやすくする為の工夫@神奈川県鎌倉市
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
E-mail info@piano-tokyo.jp
url http://www.piano-tokyo.jp/
weblog https://www.piano-tokyo.jp/blog/
2014年11月24日
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カテゴリー:ピアノ調律
グランフィールPV
3年ぶりの開催となる楽器の大イベント
「2014楽器フェア」にて
グランフィールがお試し頂けます。
http://musicfair.jp/
「2014楽器フェア」は、東京ビッグサイトにて
11/21(金)、22(土)23(日)開催です。
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
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2014年11月11日
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カテゴリー:グランフィール
ダンプチェイサーを初めて導入する際の注意点
湿気でお困りのユーザーさんのピアノ(ヤマハU3H)に
調律にお伺いしたのと同時に
ピアノ防湿器「ダンプチェイサー」を取付けました。
ダンプチェイサーは
響板周りの湿度を安定させて
調律(音律、ピッチ)を安定させる装置です。
グランドピアノの場合は、特徴そのままに機能しますが
アップライトピアノに取付けた場合に限り
箱(ケース)の内側にダンプチェイサーを取付けるため
響板周りのみならず
アクションやピン板といった
ピアノ全体を湿気から守るという
ありがたい副産物がもれなく付いてきます。
ダンプチェイサーは
初めて導入する場合のみ、少しだけ注意が必要です。
私の場合に限っては以下のようにして頂いてます。
- 1. 取付け(設置)は、1年365日いつでもOK
- 2. 初めて導入される方の場合に限り、電源を入れるのは1月から2月頃に
- 3. 製品のみの販売はせず、必ず取付けとセットでご提供
1. に関しては、このままです。
お客様が取付けたい時に取付け、設置出来ます。
2. について、ここが大変重要です。
ダンプチェイサーは想像以上によく効きます。
その為、ピアノが余剰な水分を吸ってしまっている時に
導入してしまうと、ピアノから急激に水分が抜けることになり
響板周りの割れ・剥がれや
アクション、外装その他の反り、割れ、剥がれといった
トラブルを招きかねません。
実際に、お客様が個人的にどこかで
ダンプチェイサーを購入してきて自分で設置、
梅雨時や夏場にダンプチェイサーを導入したために
各部接着の剥がれ、木部の反り、割れを
誘発させてしまった例を何件か確認しています。
湿気を防止する装置ですので
梅雨時や夏場にすぐに導入したいという
お気持ちは分かるのですが
既に春以降の湿気(水分)を
吸ってしまっている状態のピアノに
いきなりの除湿は、むしろトラブルを招く危険もあります。
そのようなトラブルを避けるための
慎重な導入の仕方として
私の場合に限っては
1月から2月あたりのもっとも乾燥した時期に
電源を入れてもらうようにしています。
1月、2月は、もっとも乾燥している時期で
春 → 梅雨 → 夏 → 秋 → 冬と経過して
この時もっともピアノから水分が抜けています。
このタイミングで電源をいれます。
この時はまだ乾燥しているので
ダンプチェイサーは作動しませんが
「3月中旬以降、じわじわと湿度が上がってきますが
これ以降は吸わせない」という導入方法により
ピアノがビックリせずにすむので安心、安全です。
ピアノという楽器はは思いのほかデリケートですので
慎重過ぎるくらい慎重でいいとおもいます。
初回導入の時期だけご注意頂ければ
その後は、自動的に管理されますので
手間が掛かりません。
時々、ダンプチェイサーを取付けたら
「とんでもなく調律(チューニング)が狂ってしまった」
と仰る方がおられますが
上記のタイミング以外で導入された可能性アリです。
ベストなタイミングで導入した場合でも
それぞれの環境やこれまでの経緯によって
導入後、半年から1年くらいは
調律が狂いやすい場合がありますが
導入後1、2回程、調律した後くらいからは
次第に調律も安定し、音色とタッチは軽快になります。
3. は、2. とも関係してきますが
お客様が自分で購入して取付けた
ダンプチェイサーを拝見していると
正しい(もっとも効果が出る)位置に取付けていなかったり
適切でないタイミングで導入した為に
逆にピアノを痛めてしまっているケースがあるのです。
よって、安全に効果的にお使い頂けるよう
製品のみの販売をせずに、取付とセットで
お引き受けするようにしている次第です。
正しく導入し、正しく取り付ければ
ダンプチェイサーは、多湿な日本での
ピアノライフを強力にサポートしてくれます。
ダンプチェイサーについては以下のページもどうぞ↓
http://www.piano-tokyo.jp/dampp-chaser.html
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
E-mail info@piano-tokyo.jp
url http://www.piano-tokyo.jp/
weblog https://www.piano-tokyo.jp/blog/
2014年11月3日
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カテゴリー:ピアノ調律, その他
タッチレールの取付け(カワイ RX-2 NEO)
10年以上のお付き合いをさせて頂いている常連さんの
カワイのグランドピアノ、RX-2 NEOに
グランドピアノ専用、タッチ軽量化ツール
「タッチレール」を取付けました。
タッチレールは
グランドピアノの重たい鍵盤を
手軽に軽くすることが出来る
グランドピアノ用のオーダーメイドツールです。
タッチレールの最大のメリットは何と言っても
「ピアノにいっさい手を加えずに取付けが可能」
であるということ。
一般的に、重たい鍵盤を軽くしようとした場合
鉛の追加による方法が用いられますが
新たな鉛を追加する為に
鍵盤に穴開けをして、鉛を追加したり
既存の鉛を抜いて、開いた穴に埋め木をする等
結構な手間が掛かる作業でした。
ところがタッチレールを取付ける方法であれば
作業時間は半分以下で済んでしまう上に
ピアノにいっさい手をくわえる事なく
鍵盤を軽くすることが可能です。
今回のお客様が
鉛による鍵盤のウェイト調整ではなく
タッチレールを選択された最大の理由は
「ピアノに一切手を加える事なく調整が可能」
という点が気に入って、
タッチレールの取付けを決めたとの事です。
ピアノに穴を開けたり
切ったり削ったりしないということは
いつでも、元の状態に戻せるということです。
これなら、どんな方でも安心して導入出来ます。
また、タッチレールは
取付け後に、ダウンウェイトの微調整が
容易に可能です。
その為、あとから
微調整が必要となった場合にも
比較的簡単に再調整が出来ます。
タッチレールはアップ(リフト)ウェイトへの
影響が少ないので、ダウンウェイトはもちろん軽くなり
且つアップウェイトもしっかり確保出来ますので
調整後のタッチ感も違和感なく
軽快かつ良好に仕上がります。
タッチレールは
グランドピアノの既存の「鍵盤押え」と
置き換えで取付けます。
こちらが皆さんのグランドピアノに付いている
「鍵盤押え」です。
このように「鍵盤押え」があった場所に
「タッチレール」を取付けて
後は、ダウンウェイトを調整すれば完了です。(簡単ですね!)
ダウンウェイトの調整は
鉛による調整の時と同様に
1鍵ごとに分銅を使って
任意のダウンウェイトになるよう調整していきます。
鍵盤ごとに独立したツマミが付いていて
これを回すことでツマミ下部の
コンプレッションスプリングの効きを調整する仕組みです。
全ての鍵盤のウェイト調整が済んだら完了です。
鉛による調整と比べ、圧倒的な速さで作業が終わります。
今回はお客様のご希望で
ダウンウェイト 55g に調整しました。
カワイのグランドピアノは
特に鍵盤が重いと訴える方の多いピアノで
例外なく今回のピアノも
デフォルトでは、
低音セクション : 65gから70g
中音、高音セクション : 60g前後
という非常に鍵盤の重いピアノでしたので
55gというと、現在では気持ち重ためのウェイトですが
体感ではかなり軽くなった印象です。
こちらのお客様は
RX-2 NEOの前は
ヤマハのU3Hでしたので
余計にカワイのグランドの鍵盤の重さが堪えます。
高校生の娘さんと、お母さんが弾くピアノで
特に娘さんがこのカワイのグランドを1時間も弾いていると
腕が辛くなってくるということで
今回タッチレールを導入されました。
またレッスン先の先生のグランドピアノがヤマハで
今回はこれらを総合的に判断し
お客様と相談の上、ダウンウェイトを
55gに決めました。
タッチレールの取付けが済んで
さっそくお客様に試弾して頂き
OKをもらいました。
私もチェックを兼ねて弾いてみましたところ
いつも、こちらのピアノを調律した後に試弾すると
鍵盤が重すぎて上手く弾けない事が多かったのですが
タッチレール取付け後は
なんのストレスも無く、スラスラと弾けてしまいました。
数値上でも軽くなってますが
体感はそれ以上に弾きやすい印象です。
速いパッセージやトリルを弾く際に
やはり軽い鍵盤はありがたいです。
グランドピアノの重たい鍵盤でお悩みの方、
タッチレールの取付けを検討されては如何でしょうか。
タッチレールに関しては以下のページも参考にどうぞ↓
http://www.piano-tokyo.jp/touch-rail.html
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
E-mail info@piano-tokyo.jp
url http://www.piano-tokyo.jp/
weblog https://www.piano-tokyo.jp/blog/
2014年10月20日
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カテゴリー:タッチレール
グランフィールの取付け(ペトロフP118C1)
アップライトピアノに
グランドピアノのタッチと響きを実現する
「グランフィール」
を、ペトロフ P118C1 にお取付けました。
「グランフィール」は、
今お使いのアップライトピアノに
グランフィールパーツを取付けることで
「アップライトピアノがグランドピアノになってしまう」
という技術で、大変ご好評頂いております。
今回の ペトロフ P118C1 は
調律のほうも3年程空いてしまっているとのことで
初回は調律、調整(整調)でお伺いしました。
気になった点は二つ。
一つは、現状の整音が上手く無い。
ペトロフは膨大な時間を掛けて
高い精度で調整してあげると
素晴らしいピアノになるのですが
なかなか、しっかり手の入っているペトロフは少なく
非常に残念なことです。
中音セクションと低音セクションはモサモサの沈んだ音、
59key(G)からの次高音はまぁまぁで、
71key(G)から上の最高音セクションは
硬化剤の効き過ぎでカチカチ山に。
このイマイチな音色は
アクションを預かっている間に
下処理しておこうと思います。
もう一点は、湿度がかなり高いようで
アクションの数カ所にカビが見受けられました。
ペトロフのような欧州製ピアノは
ある程度ドライな環境でないと
本来の性能を発揮出来ません。
また、このまま多湿の環境にさらされていると
ピアノへのダメージも大きいでしょう。
お客様に現状を見て頂いて、ご相談の上
今までよりも、きちんと除湿をして頂いて
且つ「ピアノ防湿器 ダンプチェイサー」の
取付けもご希望でしたので
こちらも取付ける事にしました。
お客様のピアノのアクションに
グランフィールパーツを取付けるために
いったんアクションをお預かりして
グランフィールをインストールしていきます。
ペトロフ P118C1 のアクションに
レペティションスプリングと
ショット&ドロップスプリングが取付きました。
ハンマーバットには、とある加工をすることで
よりグランドピアノのタッチに近い
レスポンスの良いタッチを目指します。
アクションをばらしているついでに
各稼動部の潤滑処理も済ませておきます。
グランドピアノに備わっている
レペティションとドロップを
アップライトのアクションに追加することで
アップライトピアノでも
グランドと同様のタッチが得られるようになります。
音色と形状がイマイチだったハンマーを
整形し整音の下処理をしました。
どんな音色に変化するか、納品が楽しみです。
弱音の多用により
マフラーフェルトに穴が開き
弱音が効かなくなっていたので貼り替えました。
ペトロフの弱音フェルトは
弱音時の発音を良くしようとする為か
薄手のものが使われていて
割と穴が開きやすいです。
アクションをお客様のピアノにセットし
レペティションスプリングと
ショット&ドロップスプリングの調整、
整調、整音の再調整などを
一日掛けて入念に行い
グランドタッチのアップライトピアノの完成です。
さっそくお客様に試弾して頂きます。
お客様「グランドだ!!」
しばし二人でグランドの音色とタッチを堪能しました。
グランドピアノと同様に、鍵盤を下ろした状態から
底の浅い位置での打鍵が可能になり
トリルや連打が容易に演奏出来るようになりました。
ダイナミックレンジも広くなり
演奏表現も豊かになってます。
そして、今回のペトロフ P118C1 は
音色が非常にグランドに近づいたことに
私も大変驚きました。
倍音が出やすいような形状に整形したハンマーと
ショット&ドロップスプリングとの相乗効果により
高次倍音が増し、非常にリッチな響きになりました。
最初にお伺いした際に聴いた
モサモサの音色とは、完全に別物です。
変な小型グランドなんかより
確実に良い音色を奏でています。
お客様も大変感激されておりました。良かった!
ペトロフピアノは使用材が良いので
調整如何で伸びしろがかなりあります。
グランフィールの底力、
毎回驚かされます。
「ピアノ防湿器 ダンプチェイサー」も取付け
ピアノを常に適湿に保つ様にしました。
「形はアップライトピアノ、音色と機能はグランドピアノ」の
「グランフィール」については
以下のページに詳細を掲載しております↓
http://www.piano-tokyo.jp/granfeel.html
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
E-mail info@piano-tokyo.jp
url http://www.piano-tokyo.jp/
weblog https://www.piano-tokyo.jp/blog/
2014年9月14日
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カテゴリー:グランフィール
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