グランフィールの取付け(ヤマハU5B)
大変ご好評頂いております「グランフィール」を
今回は、ヤマハのアップライトピアノ、
U5B に取付けました。
定期的に調律にお伺いしているお客様のピアノで
グランフィールの存在を知って
取付けを即決なさいました。
鍵盤を下ろした後、浅い位置から次の音が出せる機能、
グランドでは当たり前ですが
これまで普通のアップライトでは原則無理でした。
これをグランドピアノと同じ様に弾けるようにするグランフィールは
これまでアップライトで不便を感じていた方々にとっては
まさに救世主と言えるでしょう。
ピアノの製番は50万番台、納品が昭和41年のピアノですが
ピアノ本体は、予想以上にビシッとしています。
この辺りは、さすがヤマハと言わざるを得ません。
「グランフィール」は
今お手持ちのアップライトピアノに施工することで
グランドピアノの鍵盤のキータッチと響きを実現します。
グランフィールパーツを取付ける為に
お客様のピアノからアクションを取り外して
しばらくお預かりして施工します。
グランフィールは、
単にレペティションスプリング等を追加するだけではなく
ハンマーの「バット」を加工することで
よりグランドピアノに近いタッチを再現します。
バット加工の為に、ハンマーアッセンブリーを外しているついでに
ハンマーヘッドの形状も
より倍音のでる形状に整形しています。
アップライトピアノのアクションに
「レペティションスプリング」と
「ショット&ドロップスプリング」が
取付けられました。
「レペティションスプリング」は
グランドピアノには付いていますが
普通のアップライトピアノには付いていません。
そこでグランフィールは、アップライトピアノに
レペティションスプリングを追加することで
グランドピアノと同様のキータッチを
アップライトで再現出来る様にします。
アクションへのグランフィールパーツの取付け、
バット加工、その他調整が済んだら
お客様のピアノにアクションを戻して
調整作業に入ります。
今回は、よりグランドピアノのタッチに近づける為に
U5Bにオリジナルで使われている
ふにゃふにゃのフロントパンチングクロスを
グランドのパンチングに交換します。
フロントパンチングをグランド用に交換しました。
使用したのは、アンドレ・オーレベーク氏考案の
「ホワイトパンチングフェルト(コニカル)グランド用」です。
同時に下のパンチングペーパーもグランド用に交換しています。
グランフィールを取付けた方の中には
フロントパンチングもグランド用に交換される方も多いです。
少しでもグランドピアノのタッチに近くしたいところですよね。
グランフィールの取付けられたアクションを
ピアノにセットしたら、怒濤の調整タイムに突入です。
少しでも違和感の無いタッチ感にするために
シビアな調整が求められます。
一日がかりで調整して、
「グランフィール」搭載の U5B 、完成です。
グランフィール取付け後は
必ず動作に支障がないかどうか
一定時間試弾するのですが
毎回、あまりの弾きやすいキータッチに
長々と弾いてしまいます。
グランフィールを取付けたことによる副産物として
普通のアップライトピアノの場合
高音部のダンパーが取り付いていない鍵盤が
妙にスカスカになって、ダンパーの付いている
中音、低音のキータッチとの差異を感じる場合が多いですが
それもレペティションスプリングが付いたことで気にならなくなります。
これもグランフィールの特徴の一つと考えて良いと思います。
普通のアップライトが苦手とする
トリルや連打も思い通りに弾けるようになります。
まさにグランドタッチ!
私が試弾しているのを聴いていたお客様が
「音が良くなりましたね」と。
グランフィールは、タッチだけでなく
音の響きまで良くなってしまいます。
全てのアップライトピアノユーザーに
オススメのグランフィール。
詳しくは下記にも掲載しております↓
グランフィール|渡辺ピアノ調律事務所
グランフィールの取付け(ヤマハU5B)@東京都府中市
2014年7月20日
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カテゴリー:グランフィール
ピアノ乾燥剤を置く場所(アップライト)
乾燥剤ネタが続きます。
カワイのアップライトピアノ
KL-502 の調律にお伺いしまして、
下パネルを開けたところ
ペダル天秤とフレームの間に
乾燥剤ががっちりと挟まって
おまけに破けて中身(シリカゲル)が散乱していました,,,
カワイのピアノに、カワイの乾燥剤。
ピアノの中にはどっさりと乾燥剤が。
時々見かける光景です。
業界の大人の事情ってやつです...
このようにペダルの動きを妨げるような位置に
乾燥剤がある場合は概ね
- はじめから、そのような位置に置いた
- 引越などでピアノを立てたりして移動した際に動いた
等が考えられます。
シリカゲルだったので
中身が散らばる程度で済んでいますが
これがいわゆる「水とりぞうさん」的な
水の溜まるタイプの湿気取り(←絶対に使わないでください)なんかだと
塩カル水が飛散して、取り返しのつかない事になります。
どうしてもピアノの中に
乾燥剤的なものを入れないと気が済まない方は
通常、底板の右サイドが空いてますから
空いているスペースに
響板に触れないような格好で置いてください。
もっともピアノ乾燥剤の類いは
ほとんどその効果が見られない上に
先のようなトラブルの原因になることがあるので
無理に入れる必要はありません。
ピアノの除湿は部屋ごとやって頂くのが最も効果的↓
http://www.piano-tokyo.jp/humid.html
お手持ちのピアノがアップライトであれば
ダンプチェイサーを導入するのも一つの方法です↓
http://www.piano-tokyo.jp/dampp-chaser.html
カワイ KL-502 の調律@東京都練馬区
2014年7月18日
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カテゴリー:ピアノ調律
ピアノ乾燥剤を置く場所(グランドピアノ)
年配の女性のお客様から
しばらく弾いていなかったピアノを再開したので
長い間、調律せずに放置してあるピアノを
調律して欲しいとのご依頼で伺いました。
調律カードの記録によると
最後に調律したのが平成4年なので
22年ぶりの調律となります。
大屋根を開けると
響板の上に、かつて入れたピアノ乾燥剤(シリカゲル)が...
嫌な予感がします。
あぁ...やはり響板にべったりと貼り付いていました。
ピアノ乾燥剤は絶対に響板の上に置かないでください。
写真のように、べったりと貼り付いてしまいます。
どうしても、グランドピアノに乾燥剤を入れないと気が済まない方は
フレームの上に置くようにしてください。
もっとも、「ピアノ乾燥剤」の類い、
入れてもほとんど効果は見られませんので
はじめから入れないほうが
件のピアノのような不要なトラブルを招くこともありません。
ピアノの除湿は部屋全体でやって頂くのがベターです↓
http://www.piano-tokyo.jp/humid.html
訪問時の湿度が 85パーセント。
梅雨+台風接近で、外はジメジメ。
しかし年配の方は、エアコンを使わない方が多いのもまた現状。
(メディアであれだけ室内での熱中症に関して注意喚起していても浸透しないなぁ)
梅雨時期にも関わらず、家中の窓を開け放っています。
窓を開けていても快適な事は無く
ひたすらジメジメしています。
今や日本の夏は「熱帯」。
エアコン無しではピアノだけでなく
人間も熱中症になってしまいます。
窓開けにより室内が外部と同じ湿度なので
ひとまず全ての窓を閉めて
ピアノを置いているフロアにあった
2台のエアコンをドライ(除湿)運転したところ
帰り際には、湿度が65パーセントまで下がってきました。
梅雨入り前後から夏の終わりまでは
エアコンを常時運転することと
必要に応じて、除湿器も併用して頂くことが望ましいです。
多湿の環境に長年置かれていたので
当然のようにスティックだらけで
タッチは非常に重く、部品の走りが遅く、
よって鳴りも悪くもっさりとした音色。
調律は下律、本調律の2回で、どうにかピッチ上げ。
限られた作業時間の中で、稼動部全てを潤滑し、整調見直し。
次高音から最高音にかけて、ハンマーをファイリング、
その他セクションを含め針入れ。
6時間少々悪戦苦闘の末、この日の作業はなんとか終了。
潤滑により、稼動部のロスが無くなり
予想以上に鳴りの良いピアノになりました。
部屋の床材が硬くしっかりしているのも
鳴りに貢献しているようです。
稼動部のロスが無くなったことで
鍵盤のキータッチも普通のウェイトまで軽くなりました。
(55g前後)
ピアノは昭和52年頃のヤマハのG2Eですが
今のCシリーズより
こっちのほうがピアノらしい音が出てます。
こちらのお客様、
ピアノの再開を機に、大人のピアノレッスンに通っておられます。
音楽、楽器、いくつになっても楽しめる。
弾きやすくなったピアノで、たくさん練習してください!
ヤマハ G2Eの調律、調整@東京都世田谷区
2014年7月18日
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カテゴリー:ピアノ調律
ペトロフのグランドピアノの鍵盤を軽くする
ペトロフのグランドピアノをお使いのお客様から
「鍵盤が重く、速いパッセージになると弾きにくいので軽くして欲しい」
とのご依頼で、鍵盤の重さを調整しました。
せっかく音色の良いペトロフのグランドがあるのに
もう1台ある電子ピアノばかり弾いているとの事で
これではペトロフが泣いている...
最初に診た段階で
DW 60g 前後ありました。
人によっては弾けなくも無い重さかもしれませんが
60g程あると、長時間弾いていると
ジワジワと手や腕に効いてくる重さです。
調整で55g近辺まで軽くなりましたので
貼付け式の鉛を使い
DW 50g にして、且つ鍵盤ごとの重さのバラツキを修正しました。
LW は 25g 以上確保出来ましたので
違和感なく弾けると思います。
お客様に仕上がりを確認して頂いて、作業完了。
思う存分、ペトロフを堪能してくださいませ。
2014年6月28日
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カテゴリー:ピアノ調律
バットフレンジコードの交換修理
ヤマハのアップライトピアノ、
U3Hのバットフレンジコード(バットスプリングコード)の修理です。
特定の期間に製造されたヤマハのアップライトは
必ずバットフレンジコードが劣化して切れてしまいます。
(かなりの台数が該当します)
これまでに
「何やら紐(ヒモ)のような部品が劣化して切れている」
というので、言われるまま修理に出した方も多いことでしょう。
また、これから修理に出す方も居られるかと思います。
既にフレンジコードを修理なさった方々、
修理してもらう前と後で、
とりわけ何かタッチや音色は良くなりましたでしょうか?
「別に修理前と変わらないなぁ」という方も居られるのでは。
それは文字通り
「フレンジコードのみ修理した」からかもしれません。
それでは
「バットフレンジコードの交換修理(私の場合編)」
を進めていきましょう。
88ヶ所、全てのフレンジコードが切れてしまっています。
白→薄茶→茶→濃い茶
と変色していき最終的にボロボロになって切れてしまいます。
このピアノはフレンジコードが切れているのを知りながら
そのまま使い続けてしまった為に
バットスプリングが前面のダンパーレバーに当たって
折れ曲がっている箇所があったり
1ヶ所は、バットスプリングが完全に折れてしまっていました。
バットフレンジコードが切れると
バットスプリングは写真のように前方に突き出します。
そして最高音部を除く音域には
前面にダンパーレバーがありますので
ここにダンパースプリングが当たって
バットスプリングが曲がったり
最悪折れてしまうのです。
ですから、フレンジコードが切れはじめたピアノは
すみやかに修理してしまうのがベターです。
切れたまま弾いていると余計な修理が増えてしまいます。
折れたバットスプリングを交換します。
スプリングを固定(保持)するヒモは、バットスプリングコードではなく「ピンコード」と呼ばれています。
バットスプリングを交換しました。
肝心のバットフレンジコードを交換しましょう。
現在、業界で一般的になっている
フレンジコードの修理方法と言えば
このようにバットフレンジを
センターレールに残したまま
ハンマーアッセンブリーのみを外して
修理するのが一般的のようです。
この修理方法のメリットは
「修理する側が比較的楽に短時間で修理出来ること」
あとは
「弦合わせが比較的ずれないので納品後の作業が楽」
(実際にはこの方法でも弦合わせは僅かにずれます)
などの理由から、
フレンジをセンターレールに残して修理するようです。
現在私は、フレンジをセンターレールから外して作業します。
理由は、
「フレンジのトルク調整をしてタッチを良くしたい」
からです。
少しの手間で修理後のタッチが良くなるのであれば
お客様にとってもそのほうが良いと思うのです。
全てのフレンジコードを交換していきます。
これでフレンジコードが切れる心配が無くなります。
そしてタッチも改善するために
バットフレンジのセンターピンも交換します。
このピアノの場合
全域に渡りトルク過多になっていました。(バラツキ有)
やはりフレンジをセンターレールから外して
チェックしておいて正解です。
重度のスティックはハンマーレールを前進させ
ハンマーの戻りで確認出来ますが
軽度のスティックは
きちんとフレンジをセンターレールから
外してチェックしないと見逃してしまいます。
いくつかのバットフレンジには
センターピン周りに油の染みのようなものがありました。
おそらく以前の調律師さんが
スティックぎみだったので
何かオイルを噴いたのだと思われます。
つまり以前からバットフレンジは
スティックぎみであったということになります。
この段取りで修理する場合でも料金は高くしたりはしていません。
あくまでもお客様から承ったのは「フレンジコードの修理」で
トルク調整(センターピン交換)ではありませんので。
納品した時に少しでも喜んで頂けたらという気持ちで作業しているだけ。
ハンマーを外しているついでに
針の下入れとファイリングも済ませます。
アクションをお預かりする前に
ピアノの音色の現状を全域に渡りチェックしておいて
「この辺りは上下に7回針入れしておけばいいかな」
「この音域は硬化剤を使うと良さそう」
といった具合に、
そのピアノの音色に足りない部分を修正する
下準備を済ませてしまいます。
過去の経験から、下整音を済ませて
お客様のピアノにセットすると
7割から8割の仕上がりになっています。
残りを出先で微調整していくと音色が作業前より良くなります。
その他には
稼動部の磨き直しや潤滑も済ませます。
雑音の防止、スムーズなタッチにする為です。
概ねこの辺りまでが
私の場合のフレンジコード修理です。
もっとも、ピアノは1台ごとに状態が違いますので
ピアノによって、作業は違ってきます。
バットフレンジコードの交換修理、完成です。
バットフレンジコードの修理ですが
以上のような少しの手間で
タッチも音色も良くなります。
そういえば時々
「フレンジコードが切れていても
ハンマーは戻るし、普通に弾けちゃうけど」
と仰る方が居られます。
確かに、その通りですが
実はバットフレンジコードが切れて
バットスプリングが効いていない状態になると
ハンマーの戻り云々とかではなく
もっと別の大事な部分に影響が出ます。
私のところで修理した方に
それをお伝えすると
「あぁ、なるほど」と納得されます。
今回修理したピアノをご使用のお客様もそうでした。
ですので、バットスプリングやフレンジコードは
いらない子ではありません。
必要な部品です。
フレンジをセンターレールから外して
バットフレンジコードの修理をする。
などと偉そうに言ってますが
実はある時期までは
私もフレンジをセンターレールに残したまま
フレンジコードの修理をしていました。
それである時
尊敬する大先輩の一人が
「フレンジをセンターレールから外して修理したほうが
センターピンのトルクチェックも同時に出来るのでいいですよ」
と仰っていたのを聞いて
ハッと我にかえったのです。
修理作業は、ルーティン化してしまうと
何も考えずに作業を進めてしまいがちです。
「そのやり方で本当にいいのか」
「その修理方法でお客様に満足頂けるのか」
時には立ち止まって考える必要があります。
- 安くて速いが、修理前と何も変わらない作業
- 適正価格で少し納期がかかるけど、音とタッチが良くなる作業
皆さんは、どちらの修理がお好みでしょうか。
私は勿論、2. です。
M様、コーヒー豆ありがとうございます。
バットフレンジコードの交換修理@東京都練馬区
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渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
mailto:info@piano-tokyo.jp
url http://www.piano-tokyo.jp/
weblog https://www.piano-tokyo.jp/blog/
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2014年6月13日
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カテゴリー:ピアノ修理
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