消音ユニットの取外し
お客様からのご依頼で
「消音装置、撤去してください」とのこと。
サイレントを取り外したい理由はというと
- 消音ユニットが出す雑音が鬱陶しい
- 現在はサイレントが不要になった
主にそんなところです。
中古で購入なさったヤマハのUX-3に
購入店で即、消音ユニットを後付けしてもらったそうです。
この販売店の取付けもなんだかいまいちで
消音バーの直線性が保てていません...
低音セクションと高音セクションの
レットオフが 15mm 前後で
中音セクションのレットオフが
13mm 前後と全体に大分広くとってあり
且つ消音バーが
アクションの中音ブラケットを中心として
「への字」に曲がってしまっています。
これは本来、低音ブラケットの軸受け台座と
高音ブラケットの軸受け台座は
弦側に寄せるか
或は、中音ブラケットを少し削る事で
消音バーの直線が確保されるべきなのですが
それをせずにポン付けしてしまっている為に
レットオフをバカ広くとらないと
ならない状態になってしまっています。
ユニットはピアノスクエアが付いていて
現在消音ユニットは、鍵盤とセンサーが触れない
「無接点」がトレンドですが
このピアノスクエアは、アクチュエーターと
鍵盤底面が常時触れているタイプです。
このアクチュエーターが曲者で
アクチュエーターそのものが出す雑音や
鍵盤との接点でも雑音が出たりします。
もちろん雑音対策は出来るのですが
今はユニットを使っていないということで
取り外すことになりました。
現在付いている消音ユニットを外すと
以下のメリットがあります。
- 消音ユニットから発生する各種雑音が消える
- レットオフを適正値に戻せるのでしっかりした鳴りと手応えのあるタッチに戻る
- 毎回の作業時、障害物が無くなり作業効率が上がる
お客様が気に入らない雑音の原因となっている
アクチュエーター仕様のセンサーです。
あっという間に消音ユニットの取外し完了です。
すっきりした棚板。
これで消音ユニットから出る雑音は無くなります。
高音セクションのレットオフの現状。
15mm くらいあって、
こうなると力ない音色になってます。
高音セクションのレットオフを 3mm にしました。
もっと狭くすることも出来ますが
国産アップライトの性能や
一般家庭での環境など考慮し
3mm にしました。
元気のいい高音が戻ってきました。
次高音から中音へと 3mm から4mm に
低音セクションを 5mm 程度としました。
これは消音ユニットとは関係ありませんが
キーブッシングクロスが潰れて
鍵盤に大分左右のガタが出ており
さらにカタカタと雑音を出していたので
「profelt treatment」を使って修正しておきました。
profelt treatment は少し前に修理した
キンボールのコンソールの
ウィペンヒールクロスの潰れた部分に
使ってみてかなり効果が見られたので
(このキンボールは、あらためてこのブログにアップします)
今回はキーブッシングクロスに使用してみました。
そのまま浸透させただけでは
さほど膨張してくれないのですが
適量浸透させてからアイロンやコテで熱してやると
面白いようにへこんだフェルト、クロスが
元に戻ります。
もちろん酷く消耗したフェルトやクロスを
復活させることは出来ませんが
へこみ跡がついている程度であれば
ある程度効果が期待出来るようです。
作業を終えてお客様にチェックして頂き
「雑音がしなくなった!」とのことで
OK をもらいました。
消音ユニットを後付けする際は
特に消音バーの直線性には気をくばり
雑音を出さないような対策も必要です。
一番は余計なものを
ピアノに取付けないことだとは思いますが...
T様、お土産ありがとうございます!
消音ユニットの取外し@東京都目黒区
渡辺ピアノ調律事務所
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
mailto:info@piano-tokyo.jp
http://www.piano-tokyo.jp/
https://www.piano-tokyo.jp/blog/
2014年4月7日
|
カテゴリー:ピアノ調律
ブラザーピアノの修理・調整
ブラザーピアノの修理、調整を行いました。
納品から30年以上経過し
タッチ、音色ともに
くたびれた感が否めないため
ひどく消耗した部品などを交換し
各種調整を見直して
弾きやすく、良い音色のピアノになるよう
時間をかけて作業しました。
以下に作業を UP しましたので
お時間のある方はどうぞ
↓ ↓ ↓
BROTHER ブラザーピアノの修理・調整
2014年2月16日
|
カテゴリー:ピアノ調律, ピアノ修理
ヤマハC3AE-SNの鍵盤を軽くする
ヤマハのグランドピアノC3AE-SN(純正サイレント付き)の
タッチの調整作業を行いました。
製番600万番台の割と新しいピアノですが
どうも調子がよろしくない。
お客様からの最初のお問い合わせでは
「常日頃、鍵盤が重い(硬い)と感じている。
レッスン先で弾くピアノでは、
楽にフォルテ、連打、グリッサンドが出来るのに
自宅のピアノでは上手くいかず
弾いているうちに手が痛くなる。
また鍵盤ごとの重さのバラツキも気になる。
毎年調律に来てもらっているが
出入りの調律師さんに何度頼んでも
一向に改善されない...」
といった内容です。
一日目は調律を兼ねてお伺いして
同時にタッチを重くしている原因を取り除く
調整作業を一日かけて作業します。
【一日目】
サイレントの部品が作業の邪魔になるのでいったん外します。
外しました。
すぐに目に入ってくるのが
ダンパーが首吊りを起こし
スティック状態となっていること。
ブッシングクロスがきつくなり
ダンパーがスムーズに動けなくなっています。
納品から10年程の新しいピアノですが
今日まで梅雨時から夏場の除湿を
していなかった事などが主な原因でしょうか。
冬場においても、管理を知らない方が
結露でスティックを呼ぶケースもありますね。
ダンパーがスティックを起こしているということは
他の稼動部、アクションのフレンジや
鍵盤のブッシングも同様にスティックぎみだろうことが
容易に想像出来ます。
ダンパーを外して
指で指し示したブッシングクロスの穴を
適正なサイズに調整します。
ブッシングクロスに電熱コテを当てて
穴のサイズを適正なサイズに調整します。
併せてダンパーのガイドワイヤーを磨き直して
ワイヤーに適切な潤滑処理をしておきました。
念のため全てのダンパーに同じ作業を行います。
サイレントのパーツを取外し
↓
アクションを取外し
↓
鍵盤を全て外す
と、鍵盤の下はかなりゴミが溜まっていました。
グランドピアノ(特にサイレント付き)で
わりとよく見かける光景です。
このピアノは多分購入してから
「一度も鍵盤を外して調整したことが無い」
ということを意味します。
アップライトの場合
アクションを外さなくても
鍵盤を容易に外せるものが多いのですが
グランドの場合は先のように
————————————–
(サイレントのパーツを取外し)
↓
アクションを取外し
↓
鍵盤を全て外す
————————————–
という段階を踏まなければなりません。
これが面倒なのか何なのかよく分かりませんが
とにかく手の入っていないグランドに
頻繁に出くわします。
溜まったゴミを掃除して
バランスキーピンと
フロントキーピンを薬品で掃除しておきます。
クリーニングしたあとのキーピンには
キーピンに最適な潤滑剤を施工しておきます。
フロントピンも同様に処理しておきます。
「鍵盤調整」を行います。
バランス部から。
鍵盤全域でトルク過多の傾向があるので
適正トルクになるよう全ての鍵盤を調整します。
フロントも同様に調整します。
キツ過ぎるとタッチは重く反応が悪くなり
ゆる過ぎても雑音、ガタの原因となります。
慎重に作業していきます。
普及価格帯のピアノの鍵盤には
バリやささくれが目立ちます。
雑音や不要なトラブルの原因となるので
取り除いておきます。
処理しておきました。
この他に全てのフレンジを潤滑して
整調をさらいなおしておきました。
作業前のダウンウェイトは 55g から 70g 。
作業後のダウンウェイトは 50g から 65g 。
全体に 5g 軽くなったことが分かります。
まだ重い鍵盤があるのと
重さにバラツキがあり過ぎるので
引き続き次の調整にはいります。
【二日目】
鍵盤の重さを現在の標準的な重さ
「DW 50g」 となるよう、鍵盤鉛を追加する位置決めをします。
実際には低音側がこれより少し重く
高音セクションはもう少し軽くなるようにしています。
LW は 25g となるようにします。
隣の鍵盤との誤差がまったく無い状態となるよう
1鍵ごと慎重に位置決めをしていきます。
このような位置に鉛が配置されました。
あらかじめ鉛を追加する位置にマーキングしておきます。
マークした位置に穴開けをします。
穴開け完了です。
あけた穴に鉛をセットし
専用のポンチで叩くと
やわらかい鉛は穴の中で膨らみセットされます。
これを必要な鍵盤全てに対し行います。
全ての鍵盤に鉛を追加し終え
重さを再チェックしてみます。
DW 50g 、LW25g 、隣の鍵盤との誤差なし。
低音セクションから高音セクションにかけて
なだらかにウェイトが変わるよう調整されました。
さっそくお客様に試弾してもらいます。
感想は
「調律(調整)に来てもらって、こんなに良くなったのは初めて!」
とのことで、大変喜んで頂けました。
良かった...ひと安心。
これで長時間弾いても手が痛くなる事が無くなりますね。
鍵盤によっては調整前より 20g 近く軽くなっているので
体感上は相当軽快なタッチに感じる筈です。
丸二日かけての調整でしたが
期待通りの仕上がりにお客様も私も満足です。
次回は音色のバラツキを
またじっくり時間をかけて行う予定です。
鍵盤が重くお困りの方、
いつもの調律作業より少し時間をかけて調整してやると
弾きやすいピアノになりますので
ご相談くださいませ m(_ _)m
「ヤマハC3AE-SNの鍵盤を軽くする@東京都豊島区」
渡辺ピアノ調律事務所 渡辺雅美
〒154-0016 東京都世田谷区弦巻1-20-14
url http://www.piano-tokyo.jp/
weblog https://www.piano-tokyo.jp/blog/
2014年2月14日
|
カテゴリー:ピアノ調律, ピアノ修理