鍵盤を軽くして重さのばらつきを修正
「鍵盤(タッチ)を軽くして欲しい」というご依頼が多いです。
今回のピアノはヤマハの C1-SG 、
いわゆる「小型のグランドピアノにサイレントも付いてますよ!」
でお馴染みのモデルです。
2010年の4月から2012年の8月まで販売されていた
新しいピアノです。
お客様のご要望としては
- 重たい鍵盤を軽くしてほしい
- 鍵盤ごとに重さのばらつきを感じるので揃えて欲しい
という内容になります。
さっそく作業に入りたいところですが
サイレントの付いたモデルですので
消音のパーツが行く手を阻みます。
邪魔な消音のパーツを外し作業にとりかかります。
調律カードの履歴をみると
納品から5回、調律師さんが来ているようですが
これまでこちらに来ていた調律師さんは
調律(チューニング)だけして帰ってしまっていたようで
整調(せいちょう)等されておらず
とくに鍵盤調整は見直しが必要でした。
適正トルクに再調整するだけで
かなり鍵盤はスムーズになると想像します。
鍵盤調整を終えて、必要な箇所の潤滑を見直し
いったんアクションをセットし
ピアノ本体に戻して鍵盤のウェイトを計り直すと
予想通りこれだけでかなり軽くなりました。
作業前のダウンウェイトが 55g から 65g くらい、
作業後は 50g から 55g にまでと 10g 近く軽くなりました。
これなら標準的な重さと言えます。
このところのヤマハのピアノは
全盛期ほど「吊るしの状態でも快調に使える」とは
いかなくなっている印象です。
(以前のヤマハが出荷調整がいらなかった
という事ではありませんが
以前よりもディーラーに調整を
委ねる部分が多いのは間違いなさそうです)
他所のメーカーのピアノのように
出荷後のピアノは一から
調整を全て見直さないと
弾きにくい状態であることが多いように感じます。
今回は重さを軽くすることにくわえ
鍵盤ごとの重さのバラツキを修正しますので
鍵盤の必要な箇所に鉛を追加していき
隣の鍵盤とで重さが揃うように修正していきます。
分銅と鍵盤鉛を使って
鉛を追加するのに最適な位置を決めていきます。
鉛を追加する位置にマーキングしてあります。
チョークなので拭くと簡単に消えます。
あらかじめマークした位置に
鉛を追加するために穴開けをします。
鍵盤サイドの穴開け完了。
バリや割れも無く綺麗に開きました。
開けた穴と同サイズの鉛をセットします。
専用のポンチを当て、思い切って叩くと
鉛は穴の中で膨らみ固定されます。
鉛は柔らかい金属である為にこのようにセットが可能です。
必要な箇所に全て鉛が追加されました。
鍵盤、アクションをピアノに戻して
ウェイトを再計測してみます。
最低音付近で 55g 、
そこから少しずつ重くなって
中音部で50g、
さらに最高音部にかけて
なだらかに軽くなるようにし
最高音部で 48g としました。
リフト値は各音域で
推奨値を下回らないように注意して
鉛を配置してあります。
低音部は若干重たくしてありますが
私の弾いた感じでは、54g か 55g くらいあったほうが
再低音部に関しては自然な弾き心地になるように感じるので
今回はそのようにしました。
この辺りは好みによるところでしょうか。
隣接する鍵盤との重さの差も解消されました。
前述のように
このピアノは納品以来「調律」以外、手が入っておらず
さらに音色に関しては、中音と次高音のつながりが極端なので
次回はこのあたりを自然に音色が変化していくよう
「整音」作業で修正する予定です。
2013年11月7日
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カテゴリー:ピアノ調律, ピアノ修理
ペダルの雑音の原因は...
消音ピアノユニット絡みの話題が続きます。
U2H (ヤマハ、アップライト)の調律にお伺いした際、
ダンパーペダルから「キュッ」っといった感じの
雑音が出ていました。
通常雑音の発生源として考えられる
ペダル機構そのもの周辺やアクションまでを
チェックしてみましたが
ノイズが出る様子はありません。
雑音の発生源が特定出来ずに
しばらく悩んだ末、原因らしきものが分かりました。
このピアノには10年くらい前に、以前の調律師さんが
テクニクスの消音ピアノユニットを取付けているのですが
消音バー(ストッパー)と手元のレバーを繋ぐ
ワイヤーの取り回しが悪く
ペダル突上棒にワイヤーが接触していて
ペダルを踏む度にワイヤーと突上棒が擦れ
雑音を出していました。
原因が分かれば後は簡単です。
写真では分かりにくいですが
ワイヤーが突上棒に触らないような
取り回しに修正して一件落着です。
消音ピアノユニットを後付けする場合は
それが雑音の発生源とならないよう
細心の注意をはらって取付けないとなりません。
取り付けの数をこなしている方ならば
概ね回避出来る問題だとは思います。
2013年11月4日
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カテゴリー:ピアノ修理
イヤーパッドの劣化が早いコルグ消音ユニット付属のヘッドホン
写真をご覧頂いて分かる通り
コルグの消音ピアノユニットに付属する
ヘッドホンは、耳当て部分が
劣化しボロボロになります。
ベースはスポンジで
その上を薄いフィルム状のもので
覆っているのですが
それが日焼け後の皮のように
ボロボロと剥けてしまうのです。
まるで10年使い込んだように見えませんか?
ところが早い人だと1年も経たないうちに
このようにボロボロになってしまいます。
解せないのは
すぐにボロボロになってしまう人もいれば
何年も綺麗な状態のままの方もいるということ。
汗や何かに反応してそうなるのかとも考えましたが
どう見ても汗なんかかきそうもない
年配の女性が使っていたものも
わりとすぐに劣化してしまっていたので
何とも言えません。
コルグのピアノ消音ユニットは
旧テクニクス消音ピアノユニットの引き継ぎですので
この付属のヘッドホンは
テクニクス消音ピアノユニット時代のものと
同じもので、ロゴのみ変更されています。
テクニクス時代を含むと
もう10年以上、この劣化するイヤーパッドの
ヘッドホンが販売され続けています...
何年か前に、何度かメーカーに
フィードバックしたのですが
中の人曰く
「ヘッドホンなんてのは消耗品で、こんなものですよハッハッハw」
といった具合で取り合って頂けませんでした。
コルグの方、何人かに
同様の話をしても、どなたも似たような対応で
製品に対する誠実さみたいなものは感じられませんでした。
終わっとるわ...
こちらのお客様は
ボロボロの耳当てが鬱陶しかったのか
キレイに表面のフィルムを全て剥いて
スポンジのみの状態にして使っておられました。
どうせボロボロになるんだから
はじめからスポンジのみのほうが潔いように思うなぁ。
決して安くは無い金額で取付けた
消音ユニットのヘッドホンが
いくら付属(おまけ)のものとはいえ
こんなになってしまうのは
どうかと思うけどなぁ。
因にこのヘッドホンは
事務所にあるもので
数千円のさほど高くもない一般的な代物で
恐らく10年前後使っていると思いますが
耳当て部分は何の劣化もありません。
もっとも変な薄いフィルムを採用していないのが
功を奏しているとも言えますが。
素材のチョイスさえ間違わなければ
何の問題もなく長期に使用出来る訳です。
そういえば子供の頃(昭和40年代後半から50年代)
使っていたヤマハのエレクトーンに付いてきた
ヘッドホンは、10年以上経っても
まったくイヤーパッドは劣化していなかったっけ。
それから気付いた時には家に鎮座していた
ごっついステレオセットに備え付けてあったヘッドホンも
10年以上、新品のような状態を保っていたっけ。
素材を換えれば済む話なんだと思う。
It is easy.
2013年11月3日
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カテゴリー:その他