トリルのしにくいピアノの調整
購入したアップライトピアノの
「トリルがやりにくいので調整してほしい」とのご依頼。
お客様自らアップウェイトが不足しているんじゃないかと考え
88鍵全てのダウンウェイト、アップウェイトを硬貨で測定し
pdfを送って頂きました。
硬貨を使ってるのでざっくりにはなりますが
リフトウェイト20g以下になっている鍵盤が多数あるようで
確かにこの値だとトリルはしにくそうです。
で、お伺いし拝見しました。
ダウンウェイトは軽いところだと45g以下、
リフトウェイトはかなりの割合で20g以下です。
東洋ピアノは、この傾向のピアノが多々見受けられます。
このピアノ以外でも、以前お伺いしたSSSアクションのアポロは
やはり後からどなたかが鍵盤奥側に鍵盤鉛を追加し対処済でした。
アポロのSSSアクションといえば、グランドに近い云々が売りの筈ですが
こんなにリフト値が少なくては普通のアップライトよりも弾きにくいかと...
キンボールのコンソールなんかも同傾向です。
午前中に調律を済ませてからタッチの調整に入ります。
全弦張替えがされているピアノですので
当面は調律が狂いやすいかと思われますが
繰り返し調律していくと
ある時期、以前程狂わなくなったと感じる時期がきます。
鍵盤からアクションまでを観察していくと
色々と問題がありました。
レギュレチングレールは全セクションきちんと固定されておらず
前後に動いてしまっていました。(増締め済)
キャプスタンは全体にかなり前側に来ていて
マジックライン上から大きく外れていました。
ただでさえ軽いダウンウェイトが余計軽くなってしまってましたので
キャプスタン前後位置を修正しました。
ハンマーストップは広すぎてストップ位置が悪く
ジャック(ウィペン)が上手く戻れなくなる症状が確認出来ましたので修正しました。
その他、ハンマーは針入れ不足でアタックの潰れた音になっていたので針入れ。
低音セクションの鍵盤には鍵盤鉛が入っていません。
中・高音は申し訳程度に8ファイの鉛が1個だけ入ってます。
全体に鍵盤奥側が軽過ぎるようです。
一般的なアップライトピアノはアクションを外した際、
グランドピアノのように鍵盤が前下がりにはならずキープされますが(例外もあり)
このピアノは奥側が軽い為、鍵盤の手前がお辞儀してしまいます。
ざっくり整調を修正してから
重さの違う2種類のタッチ調整鉛を使用し、リフトウェイトを確保しました。
作業前、20g以下だったリフトウェイトですが
調整後のリフトウェイトは
- 低音 25g
- 中音 26g
- 高音 27gから28g
になりました。
併せてダウンウェイトは
- 低音 55gから53g
- 中音 52gから51g
- 高音 50g
と上手く繋がりました。
試弾してみると
体感で分かるくらいに鍵盤の上がる勢いは増していて
これでようやく普通のアップライトとしてお使い頂けそうです。
ただアップライトピアノですから
鍵盤を戻しきらない位置での打鍵では音抜けしてしまう場面があります。
これはいずれグランフィールを取付けて
レペティションスプリングが追加されれば解決します。
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