ヤマハC3AE-SNの鍵盤を軽くする

ヤマハC3AE-SN

 

ヤマハのグランドピアノC3AE-SN(純正サイレント付き)の
タッチの調整作業を行いました。

C3AE

製番600万番台の割と新しいピアノですが
どうも調子がよろしくない。

お客様からの最初のお問い合わせでは

「常日頃、鍵盤が重い(硬い)と感じている。
 レッスン先で弾くピアノでは、
 楽にフォルテ、連打、グリッサンドが出来るのに
 自宅のピアノでは上手くいかず
 弾いているうちに手が痛くなる。
 また鍵盤ごとの重さのバラツキも気になる。
 毎年調律に来てもらっているが
 出入りの調律師さんに何度頼んでも
 一向に改善されない...」

といった内容です。
一日目は調律を兼ねてお伺いして
同時にタッチを重くしている原因を取り除く
調整作業を一日かけて作業します。

【一日目】
サイレントの部材

サイレントの部品が作業の邪魔になるのでいったん外します。
サイレントの部品を外す

外しました。
ダンパーの首吊り

すぐに目に入ってくるのが
ダンパーが首吊りを起こし
スティック状態となっていること。
ブッシングクロスがきつくなり
ダンパーがスムーズに動けなくなっています。
納品から10年程の新しいピアノですが
今日まで梅雨時から夏場の除湿を
していなかった事などが主な原因でしょうか。
冬場においても、管理を知らない方が
結露でスティックを呼ぶケースもありますね。
ダンパーがスティックを起こしているということは
他の稼動部、アクションのフレンジや
鍵盤のブッシングも同様にスティックぎみだろうことが
容易に想像出来ます。
ダンパーを外す

ダンパーを外して
指で指し示したブッシングクロスの穴を
適正なサイズに調整します。
ブッシングクロスにコテ当て

ブッシングクロスに電熱コテを当てて
穴のサイズを適正なサイズに調整します。
併せてダンパーのガイドワイヤーを磨き直して
ワイヤーに適切な潤滑処理をしておきました。
念のため全てのダンパーに同じ作業を行います。
鍵盤の下

サイレントのパーツを取外し

アクションを取外し

鍵盤を全て外す

と、鍵盤の下はかなりゴミが溜まっていました。

グランドピアノ(特にサイレント付き)で
わりとよく見かける光景です。
このピアノは多分購入してから
「一度も鍵盤を外して調整したことが無い」
ということを意味します。

アップライトの場合
アクションを外さなくても
鍵盤を容易に外せるものが多いのですが
グランドの場合は先のように

————————————–
(サイレントのパーツを取外し)

アクションを取外し

鍵盤を全て外す
————————————–

という段階を踏まなければなりません。
これが面倒なのか何なのかよく分かりませんが
とにかく手の入っていないグランドに
頻繁に出くわします。

キーピンの掃除

溜まったゴミを掃除して
バランスキーピンと
フロントキーピンを薬品で掃除しておきます。
キーピンの潤滑

クリーニングしたあとのキーピンには
キーピンに最適な潤滑剤を施工しておきます。
フロントピンの潤滑

フロントピンも同様に処理しておきます。
鍵盤調整1

「鍵盤調整」を行います。
バランス部から。
鍵盤全域でトルク過多の傾向があるので
適正トルクになるよう全ての鍵盤を調整します。
鍵盤調整2

フロントも同様に調整します。
キツ過ぎるとタッチは重く反応が悪くなり
ゆる過ぎても雑音、ガタの原因となります。
慎重に作業していきます。
鍵盤のささくれ、バリ

普及価格帯のピアノの鍵盤には
バリやささくれが目立ちます。
雑音や不要なトラブルの原因となるので
取り除いておきます。
鍵盤のバリ取り

処理しておきました。

この他に全てのフレンジを潤滑して
整調をさらいなおしておきました。
作業前のダウンウェイトは 55g から 70g 。

作業後のダウンウェイトは 50g から 65g 。

全体に 5g 軽くなったことが分かります。
まだ重い鍵盤があるのと
重さにバラツキがあり過ぎるので
引き続き次の調整にはいります。

【二日目】
鍵盤に鉛を追加

鍵盤の重さを現在の標準的な重さ
「DW 50g」 となるよう、鍵盤鉛を追加する位置決めをします。
実際には低音側がこれより少し重く
高音セクションはもう少し軽くなるようにしています。
LW は 25g となるようにします。
隣の鍵盤との誤差がまったく無い状態となるよう
1鍵ごと慎重に位置決めをしていきます。
鍵盤鉛を配置

このような位置に鉛が配置されました。
鍵盤にマーク

あらかじめ鉛を追加する位置にマーキングしておきます。
穴開け1

 

マークした位置に穴開けをします。
穴開け2

穴開け3

 

穴開け完了です。
鉛を追加

あけた穴に鉛をセットし
ポンチで叩く

専用のポンチで叩くと
鉛セット完了

やわらかい鉛は穴の中で膨らみセットされます。
これを必要な鍵盤全てに対し行います。
中音

全ての鍵盤に鉛を追加し終え
重さを再チェックしてみます。
低音

高音

 

DW 50g 、LW25g 、隣の鍵盤との誤差なし。
低音セクションから高音セクションにかけて
なだらかにウェイトが変わるよう調整されました。

お客様によるチェック

さっそくお客様に試弾してもらいます。
感想は

「調律(調整)に来てもらって、こんなに良くなったのは初めて!」

とのことで、大変喜んで頂けました。
良かった...ひと安心。

これで長時間弾いても手が痛くなる事が無くなりますね。
鍵盤によっては調整前より 20g 近く軽くなっているので
体感上は相当軽快なタッチに感じる筈です。

丸二日かけての調整でしたが
期待通りの仕上がりにお客様も私も満足です。
次回は音色のバラツキを
またじっくり時間をかけて行う予定です。
鍵盤が重くお困りの方、
いつもの調律作業より少し時間をかけて調整してやると
弾きやすいピアノになりますので
ご相談くださいませ m(_ _)m

 

「ヤマハC3AE-SNの鍵盤を軽くする@東京都豊島区」

 

渡辺ピアノ調律事務所 渡辺雅美
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