グランフィールの取付け(CRISTOFORI)

CRISTOFORI PIANO
クリストフォリピアノにグランフィールを取付けました。

ご依頼主である奥様とお嬢様がお使いのピアノです。
ピアノ購入時に木目と猫脚に惹かれ
急いでいてよく調べずに購入なさったとの事で
後になって中国製だと知ったようです。
表向き東洋ピアノとなっていれば無理もありません。
何年かご使用頂いている中で次第に
「なんかこのピアノの音、つまらない」
と感じておられるとのこと...

確かに私が弾かせて頂いても
中国製ピアノに共通した
のっぺりと平べったく奥行きの無い
なんとも味気ない音が出ています。

「グランフィールを取付けたら音が良くなりますか?」と
今回取付依頼を頂戴した次第です。
お嬢様も連打やトリルが頻発する曲を
弾くことが多くなってきたそうで。
これはなんとかしてあげたい、頑張ります。

L型アングル無し
グランフィールパーツを取付けるため
アクションをお預かりしてきました。
で、このピアノ
なんとダンパーストップレールの次高音部が
L型アングルで固定されていません
固定されているのは
両端ブラケットと、中音ブラケットの3点のみ。
そのためレールの次高音部は前後に撓みます。
後付けの消音ユニットのやっつけ工事で
ストッパーをL型アングルで
固定していないケースは時々目にしますが
メーカーオリジナル状態で
こういう仕様ははじめて見ました...

L型アングル
無いなら追加しましょうということで
ホームセンターに丁度良さそうなアングルがあったので
これを取付ける事にします。

L型アングルを加工
そのままだと下端が長過ぎるので
カットして新たに穴開けしたら丁度良い感じに。

L型アングル取付け
次高音部にL型アングルを取付けました。
これでダンパーストップレールのぐらつきも解消されます。
何故ストップレールがしっかりしていないと困るかというと
このレールにドロップスプリングを取付けますので
レールにぐらつきがあると
ドロップスプリングが正しく機能しないからです。

アングルで補強
ダンパーストップレールは
いつものようにアルミのアングルで補強しておきます。

レール加工
レギュレチングレールやダンパーストップレールに
スプリングを取付ける為の下加工をします。

バット加工
ハンマーバットの加工。

質の悪いバットスキン
順番が前後しますが、またまた問題点が。
このピアノのバットスキン(キャッチャースキンも)
質が悪く表面がガビガビのザラザラ。
バットスキンの上をジャックの頭が
滑りながら抜けたり戻ったりしますので
ここが荒れているとジャックのスムーズな動作が出来ず
タッチも悪くなります。
グリーンではなくラフでゴルフボールを転がすみたいなものです。
このままでも一応動作しますが
お客様にこの事を連絡すると
「いい機会なので交換してください」との事なので
滑りの良いスキンに交換する事に。
厳密には、キャッチャースキンも交換したほうが
よりアクションの動作が良くなりますが
今回そちらは手を付けません。
ご予算とお時間がある方の場合は
キャッチャースキンのほうも交換をオススメします。

バットスキンを剥がす
品質の悪いバットスキンを剥がします。

バットスキンをカット
新しいバットスキンを規定のサイズにカット。

新しいバットスキン
新しいスキンに交換していきます。

フレンジのガタ
で、またまた問題のある箇所が。
このピアノ、フレンジの左右ガタが多過ぎます。
バットフレンジは特に酷く
ジャックとウィペンフレンジにも
いくつかガタがあるようです。
グランフィールではグランドピアノ同様に
レペティションスプリングが取付けられますが
この時、ジャックやウィペンフレンジにガタがあると
ダブルエスケープメントする際に
「カチャ」と雑音が発生する事になります。
年数の経過したグランドピアノでは
比較的見かける事の多い症状で
これがグランフィールでも再現されてしまいます。
グランドの不具合まで再現するグランフィール恐るべしです。
なので、以前某所から購入した
フレンジの左右ガタを補正するペーパーを使い
フレンジのガタを修正します。

バットフレンジのガタ修正
バットフレンジは
修正ペーパーを半分にカットして
バット側のフレンジと当たる面(膨らんだ部分)に
貼っていきます。
それと、バットスプリングですが
普通のスプリングならば
この角度だとスプリングが効きすぎになります。
ただこのピアノに使われているバットスプリングは
腰のないスプリングが使われているので
通常より圧が強めとなる角度でも
まだ少し弱いくらいです。
時間と予算がある方の場合は
バットスプリングも交換すると
タッチが良くなります。

ハンマー整形
右が作業前、左が整形後のハンマーです。
ゴロンとした形でしたので
先端を出して弦と接する面を少なくし
倍音が出る効果を狙っての作業です。
今回は、この他に針入れ、それとハンマーコテを使っています。

ダンパーロッド磨き
お客様がペダルからの雑音を気にされていたので
ダンパーロッドを磨き直しておきました。
ダンパーレバーとの接点はもちろんですが
センターレールと固定される
稼動部から雑音が出る事も多いので
こちらも要注意です。
ダンパーレバースプリングの先端も
潤滑処理したところ
アクション側のダンパー雑音は解消されました。

レペティションスプリング
ジャックの手前に新たにレペティションスプリングが追加されました。

ショット&ドロップスプリング
ハンマーシャンクの先に
ショット&ドロップスプリングを追加。

パーツ取付け完了
グランフィールパーツの取付けや
各種加工、調整が済みました。
実際にはここに掲載していない細かな作業が
いくつもあります。

ドロップスプリングの調整
お客様のピアノにアクションをセットして
ドロップスプリングの調整。
黙々と、正確に。

食事
長丁場の作業にお気遣い頂いて食事が。
O様ありがとうございます。お気遣いなく。

レペティションスプリングの調整
引き続きレペティションスプリングの調整を。
レペティションスプリングの存在を感じさせず
且つ効果の上がるようなセッティングにしています。
この辺りはお客様の好みにより
ある程度調整幅があります。

作業完了
午前からはじめた調整作業も夕方には完了!
グランフィール以外の調整も行っているので
少々お時間を頂いておりますが
その分、仕上がりの精度は高いと思います。

試弾
お客様に試弾してもらいます。
「こんなに変わるんですね」
「鍵盤の反応も早くなったように感じます」

私が弾いて少し離れた場所で聴いていただくと
「目を閉じて聴いていたら本当にグランドピアノみたいです」
「低音もグランドみたい」
「これからはピアノを弾く時間が長くなりそうです」

と喜んで頂けました。

表情のなかった音色は
豊富な倍音によって厚みのある華やかな音色に変化しました。
高音セクションはキラッキラに
中音は分厚く、低音は力強く
予想以上にグランド化してしまいました。

後にメールを頂戴して
作業時、外出されていたお嬢様が
このピアノを弾いて、開口一番
「グランドだ!」と興奮していましたとのご報告が。

グランフィールはアップライトピアノの
潜在能力をフルに引き出してくれます。
音、響きは
まさしく「グランドピアノの”あの響き”」です。
言葉では上手く説明出来ませんが
取付けた方は口々に「グランドだ!」と驚かれます。
トリルや連打も格段にコントロールし易くなります。

アップライトをグランドピアノ化する
グランフィール、オススメです。

 
グランフィールの取付け(CRISTOFORI)@東京都大田区

 

グランフィール」については
以下のページに詳細を掲載しております↓
http://www.piano-tokyo.jp/granfeel.html

 

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