特定の音が出ない・特定の鍵盤が戻らない
「音が出ない・出にくい」「鍵盤が戻らない・戻りにくい」場合に最も多い原因は、湿度が高い環境に置かれていたことで湿気を吸った為に部品の動きが悪くなっているケースです。
これはピアノでは非常にポピュラーなトラブルで、「スティック※1」という症状を起こしている場合に、そのような状態になります。
音が出なかったり鍵盤が戻らない状態になってしまった時に、深刻に考えてしまう方も居られますが心配はいりません。
スティックは比較的簡単に治す事が出来ますので、調律師さんに適切な処置を施してもらえば、もと通り快調になります。
具体的には、鍵盤のフロント部のクロス・バランス部分のクロス及び穴が多湿により膨張してきつくなっている場合があります。
アクション※2のフレンジ(ハンマーバット・ジャック・ウィペン・ダンパー)の回転部分が、やはり多湿の影響で適切に動けなくなっている事も主な原因です。
ダンパーレバーのクロスに穴が空き、スプーンがスムーズに動けなくなったことで音が出なくなったり鍵盤が戻らなくなるケースもあります。
レバークロスに穴が開いてスティックを起こすピアノは、一定期間弾かない時期があって、再び弾き始めるピアノで起こりやすいです。
「子供の時に弾いていたピアノを実家から移動してきて再び使う」ような場合には要チェックです。
安易な応急処置はせずに正しく修理してあげれば、修理箇所に関しては再発は心配ありませんが、設置環境があまり宜しくない場合(多湿、過乾燥等)は環境を整えないと再発することがあります。
日頃からスティックの起きない環境下にピアノを置いてあげることで、ピアノの寿命は延びますので、湿度管理※3にも気を配ってあげると良いでしょう。
※1 ピアノ用語集の S : Stick(スティック)参照
※2 ピアノ各部の名称参照
※3 調律を安定させる為に ~ピアノの湿度管理~参照
The author is Masami Watanabe