消音ピアノユニットのデメリット...
メリットばかり謳っていては良くないのでデメリットをご案内します。
購入、取付けしてから「こんな筈じゃなかった」という方が出ないために、消音ピアノユニットの問題点にも触れておきます。
消音ユニットの個人的な評価は、星0.0 ☆☆☆☆☆ オススメしません。
■「消音」「サイレント」(最近ではハイブリッドピアノなんて言ういかにもなネーミングも)という言葉に惑わされがちですが、「打鍵音」は一般的な電子ピアノのそれより、遥かに大きいです。
鍵盤を下ろした時に底に到達することで出る打鍵音にくわえて、ハンマーシャンクがシャンクストッパーを叩く音があります。
アクションの各部が出す音ももちろんありますね。
ピアノという非常に良く響く箱の中で、打鍵音は強調されゴトゴトと大きな音と振動になります。
生ピアノのようにアクションを搭載していない一般的な電子ピアノでは、ここまで大きな打鍵音はしません。
消音ユニットではありませんが、「アップライトのアクションを搭載した電子ピアノ」というのもありますが、これは消音ユニットと同じように、大きな打鍵音がします。
実際の現場ではどうかというと、私のお客様の中にも集合住宅にお住まいの方で、消音ユニットを取付けてみたが打鍵音が予想以上にうるさく階下にお住まいの方から苦情が来てしまい結局使えなかったという事例が数件あります。
戸建てのお客様でもゴトゴトという打鍵音を家族が嫌がり、結局夜間や朝方など、消音を使いたいときに使えないという方もいらっしゃいました。
■モデルによっては、とくに連打やトリルした際に、「突然大きな音が鳴る」ことがあります。
超初歩の段階であれば問題なさそうですが、中級者以上の方の場合、このバグは結構致命的かもしれません。
このバグはアップライトの「消音」にみられる現象で、似たようなもので「アップライトのアクションを搭載した電子ピアノ」でもこの現象が起こります。
■生ピアノに消音装置の様々な部材を取付けたことで、それらが雑音の原因となり、雑音がする場合があります。
アコースティック演奏時(非消音時)に、弦の振動に消音の部材が共鳴し、ビリビリとした典型的な共鳴による雑音が出る場合があります。
また鍵盤下の光センサーにアクチュエーター(つめ)を採用しているタイプは、鍵盤の底面とアクチュエーターが物理的に触れており、この接触部分で雑音が出る場合があります。
アクチュエーターの支点部分でも雑音が確認出来る場合もあります。
勿論これらの雑音に対してある程度の対策をすることは出来ますが、思いのほか消音ユニットは所謂「共鳴雑音」の発生源となりやすいです。
■消音ユニットを取付けたことにより、ハンマーシャンクがシャンクストッパー(消音バー)を逃げる必要がある為、レットオフ(ハンマー接近)を通常よりも広くとる必要があります。
そのため消音ユニットを取付けると音とタッチが変わってしまいます。
物理的には限りなくレットオフを変えずに取り付け、調整することも可能ですが、私はやりません。
何故なら一般家庭のピアノは、1年(春夏秋冬)を通じて、驚くほど整調(せいちょう)が変化するからです。
シャンクストッパーをギリギリで逃げるような調整にしてしまうと、季節によってはハンマーシャンクがストッパーを逃げられずに、消音使用時の発音がおかしくなってしまいますし、最悪ハンマーシャンクが折れます。
その為、大分余裕をもったレットオフの値にしなければなりません。
それが証拠にヤマハのサイレントでは、親板内側にシールで注意書きがされていて、そこには「レットオフ5.5から8mm」にしなさいとなっています。(因に消音を付けていないアップライトは3mm前後です)
実際のヤマハのサイレント、出荷されてきたものを観ると、それ以上にレットオフを広くしているように見受けられます。
そのくらい余裕をみておかないと、シャンクを逃がせずに消音が上手く機能しなくなる懸念があったり、シャンクが折れてしまう危険があるからです。
レットオフを通常の状態より倍以上広くすると、かなり音色とタッチは変わってしまいます。
もっともこれは消音ユニットを取外し、元のアコースティックピアノに戻してレットオフを推奨値にすれば元通りになります。
■定期の調律作業の際、消音の部材が邪魔で作業性が悪くなる。
特に整調、整音などの作業の際に消音の部材が鬱陶しいです。
■ヘッドホンから聞こえるピアノの音ですが、モデルにもよりますが、電子ピアノのほうが全般に良い様に感じられます。
■某社の消音ユニットに付いてくる「ヘッドホンのイヤーパッド」は早期に劣化しボロボロになる場合があります。
ヘッドホンそのものの機能は問題ありませんが汚らしいです。
付属のヘッドホンはオマケと考えた方が良さそうです。
■某韓国製の消音ユニットの場合で、人によっては「レイテンシー(打鍵してから発音するまでの遅延)」が気になる場合があるようです。
90年代のDTMなんかで、USBのオーディオインターフェースやパソコンの性能が悪い時代には、良く取り上げられていた問題です。
どうも消音ユニットの全般的な性能は、今時のデジタル楽器と比べ周回遅れと感じます。
■某廉価モデルは、強弱が2段階のお粗末な仕様で使い物になりません。
尚、標準モデルは問題ありません。
■消音ユニットは家電(電化製品)ですので、電気製品お約束のコンデンサー不良により、何年か先には必ず故障します。(家電ではすっかりお馴染みの買い換え需要を見込んだ仕様のこと。あまりにも有名なのは「ソニータイマー」)
以上のように、消音ユニットにはメリットとデメリットがありますので、購入の際にはそれらを良く検討の上、製品の性質を理解した上で取付けるとよいでしょう。
最近では「後付けした消音ユニットを取り外して欲しい」とユニットの取り外し依頼が増えています。
「なんとなく便利そう」と思って取り付けた消音ユニットだったけど、後になってタッチや音色が変わってしまうことに不満を感じる方も少なくないです。
結局は余計なものを取り付けていない純粋な生ピアノと電子ピアノの2台体制が最適解です。
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The author is Masami Watanabe