Steinway スタインウェイのスティック修理
スタインウェイのスティック修理を行いました。
スタインウェイのアップライトピアノ モデルKで、80年ほど前のピアノです。湿度の高い半地下に置いてあるため、湿気でスティックを起こし特定の鍵盤で音が出なかったり、全域でタッチがとても重くなっています。初回はピアノの状態をチェックさせて頂くのも兼ねて調律にお伺いしました。弦などは以前に1度交換されているようでしたが、アクションは...その日にアクションをお預かりしました。
アクションには大量のカビが生えてました。
こちらでお預かりして作業する間、適湿に保っておきアクションの余分な水分を抜きます。
このスタインウェイのアップライトは、バットとダンパーのフレンジを一つのフレンジで兼ねています。現代のアップライトピアノのようにフレンジがそれぞれ独立していないので、取り外していく際や作業の勝手が違います。
ダンパーレバーの後ろのネジを緩めると、フレンジをセンターレールに残したままダンパーレバーが外せます。現代のアップライトのバットプレートのような仕組みでダンパーが外せます。
ダンパーが外せたら、フレンジをセンターレールから外すとハンマーアッセンブリーが外せます。
フレンジの回転部分の中心にはセンターピンが入っています。ここの動きが湿気で悪くなっています。(フレンジのトルクが大きい)
正常な動きにするには古いセンターピンを抜いて、新しいピンを入れます。ピンを新しくするだけでは上手く動きませんので、ブッシングクロス(センターピンの周りの赤いクロス)をリーマーで慎重に削って適正トルクになるよう調整します。センターピンを入れてはトルクを確認し、またリーマーを入れて調整、その繰り返しで規定トルクに仕上げます。それぞれのフレンジは鍵盤の数だけあるので作業はそれなりの時間を費やします。(ダンパーは次高音まで)バットスキンの黒鉛も同時に落としてPTFEパウダーを塗布しておきました。
バットとダンパーのセンターピン交換を終えたら、ウイペンアッセンブリーを外しこちらのセンターピン交換に取り掛かります。こちらは現代のピアノと基本的に同じ造りです。ジャックのクッションがレールではなくジャックに付いてます。ヒールは丸みのある形状です。
ジャックとウイペンのセンターピンをそれぞれ交換していきます。それぞれ鍵盤の数だけ交換しなければなりません...
ヒールクロスに付いた黒鉛はタッチに影響が出るのと雑音の原因にもなりますので
ヒールクロスの黒鉛をベンジンで落としてからPTFEパウダーを塗布しておきます。
スプーンはネジ頭やドライバーを避けられるような面白い形状をしていますね。スプーンの頭は磨いておきます。
ハンマーはかなり弦溝がついて形も悪くなっています。
ハンマーをファイリングして弦溝もスッキリ無くなりました。ハンマー間隔や走りも修正しますが、現行のアクションと違いフレンジがセンターレールに水平に取り付いているので少々厄介でした。
アクションの修理が済んだら、ピアノ本体にアクションを戻して内部清掃、そして整調・整音作業を行い作業完了です。
ミドルエンドにはサポートダンパーが8つもあり、ハンマーはサポートダンパーの脇スレスレを通り打弦します。
次高音のダンパーもスタインウェイの場合かなり上まで付いています。
フレンジのスティックが解消し、タッチは軽くなって鳴りも良くなり本来の音とタッチが戻ってきました。今後は定期的な調律と湿度管理に気をつけて頂ければ、この状態をキープ出来ると思います。
上前パネルの透かしぼりはトーンエスケープになっています。
【Steinway スタインウェイピアノのスティック修理@東京都目黒区】