ヤマハ グランドピアノGC1-SNの重たい鍵盤を軽く調整
ピアノの先生がお使いのヤマハの小型グランドピアノGC1-SN の鍵盤がずいぶんと重たいので標準的な重さまで軽くなるよう調整しました。
作業内容は大まかに
- キャプスタンの交換
- 鍵盤鉛の追加
- 整調の見直し
以上で弾きやすいピアノになるよう調整します。
GC1-SN はC1サイズにサイレント(消音)が抱き合わせになって手頃な価格帯の為か、結構お使いのお客様が多いです。ただ、C1、C2あたりのサイズのピアノはデフォルトの状態ですと鍵盤タッチは重く(人によっては堅いと表現することも)、意識して指を押し込むように弾かないと鍵盤が降りないように感じるピアノが少なくないようです。
実際に弾いてみた感じでも確かに鍵盤は重めに感じられます。感覚だけでは曖昧になってしまうのでダウンウェイトを計ってみることにします。
中音セクションで 60g から 65g 前後、高音、低音セクションでは 65g から 70g 近くある鍵盤もありました。重すぎて分銅が下りない鍵盤もあります。現在の標準的な鍵盤の重さは「50g」程度ですから10g から 20g も重たい鍵盤です。指先で 20g も違うと相当重たく感じる事でしょう。
というわけで、この重たい鍵盤のピアノを標準的な重さの鍵盤に調整していくことにします。
サイレントのストッパーの稼動に使われているスプリングの付け根部分が特定の高さの音に共鳴し雑音を出していたので、グリスアップして対処しておきました。
GC1-SN にはサイレント(消音)が付いてますからこれらの部材をいったん取り外さないと作業が出来ません。サイレント(消音)は便利なものではありますが調整作業をする際、普通の素のピアノであれば必要のないサイレントのパーツの取外し作業が増えて作業性が悪くなっているのが宜しくありません。
外しました。
鍵盤の裏側(底部)にもサイレントのツメが付いているので痛めないように注意しながら鍵盤を取り外します。
鍵盤の下にはゴミが溜まりやすいです。
筬を清掃しました。
バランス・フロントキーピンの汚れを薬品を使って拭いてからキーピンに最適な潤滑剤を軽く塗布しておき鍵盤の不要な摩擦抵抗を軽減します。
「鍵盤調整」も見直しておきます。全体にバランスホールが若干タイトでしたので適正なトルクになるよう調整し直します。
フロントもキープライヤーを使って調整しておき鍵盤の動作に支障がない状態にしておきます。
鍵盤後部にあるキャプスタンになります。写真のはヤマハ純正のです。
今回はこれをスタインウェイの純正キャプスタンに交換します。
このヤマハのキャプスタンを
スルスルと回していき
取り外します。
新たにスタインウェイ純正キャプスタンを
スルスルと入れていき
セット完了。88鍵全て交換します。
左がスタインウェイのキャプスタンで右がヤマハのものです。違いは頭の形状で、ヤマハのものは頭が平たくスタインウェイのものは絶妙な丸みがあります。この微妙にラウンドしたアールが鍵盤のコントロール性を向上させます。後で行う「鍵盤鉛調整」との相乗効果で弾きやすいタッチのピアノにするのが狙いです。今回はキャプスタンをそっくり交換していますがヤマハのキャプスタンはそのままで頭の形状を換える為に取り付けることが可能なアタッチメントをセットしてキャプスタンのアールを変更する方法もあります。
半分まで交換しました。残り半分も頑張って交換します。
全てのキャプスタンが交換されました。
取り外されたヤマハのキャプスタン。
アクションをセットした状態です。鍵盤の奥、ウィペンの下に整然と並んでいるのがキャプスタンです。
続いて鍵盤鉛を追加する位置を決めていきます。一鍵ごとに分銅を使って慎重に位置決めをしていき一度計った鍵盤も後で見直しをしながら鉛を追加する位置を正確に出します。
このような感じで追加することになりました。
鍵盤サイドに鉛と同サイズで穴開けをします。
綺麗に穴が開けられました。
鍵盤鉛をセットして
専用のポンチをハンマーでドンと叩くと
軟らかい鉛は鍵盤の中で膨らみ固定されます。
鍵盤にバリやささくれがある場合は同時にこれらを取り除いておきます。隣の鍵盤に触れて雑音を出すことがある為です。
鍵盤に鉛を追加し終えたら筬に鍵盤とアクションをセットしピアノに戻しウェイトを計り確認します。
中音
黒鍵も
高音
低音
きっちり 50g になりました。正確には最高音部にかけて 48g と徐々に軽くして最低音部にかけて 54g と徐々に重くなるように仕上げてあります。リフトウェイトは 25g を中心に極端に不足することがないようにしてあります。
試弾した感じは良好で物理的な重量が軽くなった事で自然に鍵盤が下りるようになりキャプスタンのアールも地味に効いています。
一ヶ月ほど弾いてみてのお客様の感想は「ずっと弾いていられますね」との事です。
小型のグランドピアノをご使用で鍵盤の重さや弾きにくさが気になっている方にオススメの調整です。何時間でも弾いていられるようになってピアノがますます楽しくなりますよ。
P.S.
作業中の湿度です。1年中このくらいでキープしてあればピアノも調律も良い状態が保たれます。
ヤマハの C1、C2 は時間の経過とともに棚板が下がってくることが知られていますがこのGC1-SN も棚板が下に下がって口棒との間に隙間が出来ていました...
【ヤマハ グランドピアノGC1-SNの調整@東京都豊島区 】