鍵盤を非常にゆっくり下ろすと音が出ない
それで正常です、故障ではありません。
鍵盤をそろーりと下げていきますと、
ピアノ内部でジャックというパーツが、ハンマーを弦の方向へ押し上げていき、
弦の手前2mmから3mmのところで手前に抜ける「脱進(だっしん)」ような設計になっております。
鍵盤を極端に遅いスピードで下ろした場合、ハンマーは弦に触れる事なく元の方向に戻り、バックチェックにくわえられ音は出ません。もしジャックが脱進しなかった場合、ハンマーが弦にベタっと張り付いてしまい、ベチャっという音になります。例えて言うならば、野球のボールを壁に向かって投げる際、通常壁との距離をある程度とり、離れたところから投げて、手を離れたボールは壁に向かい、そして壁にあたりますが、壁に張り付くような体制で壁に向かってボールを投げようとして、ボールが手を離れる前に、手に持ったボールとともに壁に手をぶつけたとします。痛いですよね。ジャックが脱進しないとこのような状態になってしまい、ハンマーは「あ痛っ!」と可哀想なことになってしまうため、適当な位置で手を離してやる必要がある訳です。ピアノのアクションはこのような仕様ですので、あまりにゆっくり鍵盤を下ろすと、ジャックが押し上げる力が十分でなく、結果勢いが足りずにハンマーは弦に到達する前に元の方向へ戻るのです。
※関連リンク : ピアノ用語集L : Let off (レットオフ)
The author is Masami Watanabe