ピアノがパサパサした音色になってしまいました
長年の使用と経年変化で、ハンマーの溝(通称「弦溝」)のきわ部分で弦を叩くとこのような音色になります。
力のない、芯のないパサっとした音。
通常、ハンマーはいつも同じ場所で弦を叩きますが、ピアノを設置している湿度環境が悪いと(または環境は良くても長年の使用により)少しずつハンマーの打弦位置に左右のずれが出てしまう場合があります。
この際、わずかに左右どちらかにずれてしまっていると、弦の溝部分でもなく、溝から完全に外れた部分でもない、ちょうど弦溝の谷間で弦を叩くような状態となってしまい、かすれたような音を出すピアノとなります。
いつも定期的に調律しているのに何故?と思う方がいるかもしれません。
まずピアノは「木」で出来ているということを思い出してください。
「木」ですから、少しずつ反ったり、曲がってきたりするのは自然な事なのです。
その為、定期調律の際は、「調律(チューニング)」だけ行うのでは無く、「整調」「整音」「修理」といった作業を必ず平行して行わないとなりません。
毎回、「調律」しかされてこなかったピアノでは、このような状態となってしまう事が起こり得るのですね。
数年使っていなかったピアノを使いはじめるような場合もこのような状態になっているピアノを見かけます。
この状態を修正するには、まず主な原因であるハンマー先端の「溝」を取り去らなければなりませんので、ファイリングという作業で、ハンマーフェルトをひと剥きしてあげます。
(「1枚剥く」等と言ったりします)これにより新品時のハンマーと同じ、先端部がまっさらな理想的な状態となります。
ファイリングの際にうっすらと弦溝を少し残す場合もあります。
ファイリングしたままのハンマーは音色が乱れておりますので、併せてその他「整音」作業も行います。
さらに、ハンマーの左右中心で弦を打つよう、ハンマー間隔の見直し、その他整調の見直し等を、細かく調整してあげると、無事ピアノ本来の音色にもどります。
ピアノは「木」で出来ています。少しずつ状態は変化していきますので、定期調律の際は、調律だけではなく「整調」「整音」「修理」を行うことが、ピアノの状態を維持する上で大変重要です。
関連リンク : ハンマーのファイリングってどんな作業?何のためにするの?
The author is Masami Watanabe (from www.piano-tokyo.jp)