スタインウェイのAccelerated ActionでSRは下がるのか?
スタインウェイのアップライトピアノをお使いのお客様からの作業依頼です。
ご依頼内容は
- 2年空いてしまったが調律して欲しい
- 弱音フェルト使用時に30key(D)の音が出にくくなることがある
- タッチを軽くして欲しい
以上3つです。
まずは調律から。
2年ほどの空きでしたが雨の日が多いせいか全体にピッチが上がっていたので下げ調律を行いました。
高すぎるピッチは弦やフレームに良い事ないです。
30key(D)のステイックは、後付け弱音フェルトの取り付け位置が悪く、ハンマーが弱音フェルトに捕まってしまい音が出せなくなっていました。
弱音フレームの低音側の軸受けを、弦側に8mm程度移したら症状は改善しました。
このピアノは金属製のキャプスタンなのでポストワイヤーを曲げて前後位置を変更することは出来ません。
アップライトピアノでタッチを軽くするために有効なのは、バランスパンチングクロスの半カットでSRを下げる方法が考えられます。
このスタインウェイはAccelerated Actionなので、かまぼこ型の丸みを帯びたバランス軸が採用されています。
普通のパンチングのようにフラットではないので、半カットは効果が無さそうですが試してみないことには分かりません。
しかし丸みはあるのですが、よく観察すると鍵盤の底面は完全に点ではなくバランスクロスが少し潰れるために面で触れているようです。
少しの効果は期待できそうです。
という訳でメープルの土台の上のクロスを半カットしてみました。
BWを測定すると2g程度下がりました。
ギアレシオも少し小さくなったためか、弾いてみた感じも軽くなっています。
ほとんど変化がないかなと予想していましたが、かまぼこ型のバランスパンチングでもSRが少し下がるということが確認出来ました。
その他に、スプリング調整や前後キーピン、キャプスタン、ダンパースプーンなどの潤滑をしてまずまず弾きやすいピアノに仕上がりました。
作業時間をいただける場合は、バランス部分の下をフラットな土台に変更してから通常のパンチングクロスの変更して半カットすれば、もう少し軽くなると思います。
関連リンク : スタインウェイピアノのスティック修理
The author is Masami Watanabe