調律の作業時間はどのくらいかかりますか?
初回訪問時は分かりません...と言うのが正直なところ。
初めて作業を頼む人にとっては「どれくらい時間がかかるの?」と心配になる気持ちは分かります。
初回の作業を依頼する日は「丸一日空いてます」って日を作業日にご指定ください。
定期的にお伺いしているピアノは概ねいつも通りです。
ピアノの調律にかかる作業時間は、ピアノの状態によります。
半年前にメンテナンスされたピアノにもかかわらずピッチが25centも低下しているピアノは、ピッチ上げ調律をしなければ標準音高まで引き上げられませんし、それだけ音律が狂っているピアノは、整調や整音もお時間を頂き手を入れる必要のある状態であることが少なくありません。
昨今は製造から年数の経った古いピアノを調律することが多くなってきました。
子供の頃に自分が使っていたピアノを実家から現在の住まいに移動して、自分の子供に使ってもらうなんてケースはとても増えました。
多くの場合、自身がピアノをやめてから調律を頼むのもやめてしまうので、調律が15年空きとかになっています。
その間に弦は緩み、整調は乱れてしまいます。
これを「普通の状態」に戻すのはなかなかどうして大変な作業になるのです。
ご実家からしばらくメンテナンスをしていないピアノを移動した場合などは、十分な作業時間が欲しいところです。
そのあとの定期的な作業を繰り返していけば、次第にピアノのコンディションも良くなり、作業も少しずつ早く終わるようになります。
ブランクがある場合、最初はどうしても時間がかかります。
同じように自分が子供の頃に弾いていたピアノを現在の住まいに移動する場合でも状態が良いピアノもあります。
ピアノを弾かなくなってからも、親御さんが毎年きちんと調律を頼んでいる場合もありまして。
そんなピアノは当たり前ですがコンディションが良いので、作業時間がさほどかからない事もあります。
こんなケースもあります。
ご実家にピアノを置いていたのは戸建ての一階。
移動先の現在の住まいがタワーマンションの30階。
こういった場合、戸建ての一階は慢性的に湿度が高いのでピアノは湿気を吸っています。
ずっと同じ戸建ての一階に置いてあれば少々多湿でも問題ありません。
常に多湿ならその状態で安定しているので。
でも「多湿ピアノ」をタワーマンションの30階に移動すると、今度は乾燥した環境になります。
すると数ヶ月、半年、1年とピアノから水分が抜けていき、しばらくは音律や整調が安定しない場合があります。
10年調律をしていないピアノでもその前の20年、定期的にメンテナンスされていたピアノだと調律の狂いが4cent以内という事もあります。
納品から定期的な調律を例えば15回継続しているピアノは音律がとても安定していて「作業がとてもスムーズに」ということもあるのです。
楽器店及び各々の調律師によって作業スタイルは異なります。
1時間程で切り上げてしまう仕事もあれば、何時間でも作業するスタイルもあります。
私は、そもそも何時間で作業を終えるではなく、理想とする状態になるまで作業するという思いが先ですので、何時間で終わるとか決められる作業ではないと考えております。
ピアノという楽器は、「調律」だけしていても状態は良くなりません。
調律の他に、「整調※1」「整音※2」「修理」という作業が必要です。
時間をきっちり決めてやっている作業は、時間内に終わらせる為にどこか妥協しているということになります。
※1 ピアノ用語集の R : Regulating , Regulation(レギュレーティング、レギュレーション、整調)参照
※2 ピアノ用語集の V : Voicing(ボイシング、整音)参照
私の場合に限れば、定期的に調律をされているピアノで平均2時間~3時間程度の場合と
定期的に調律していても午前から夕方までかかる場合があります。
ピアノの状態と環境がきわめて良好な場合は、もう少し短時間で終わる場合もありますし
定期的にメンテナンスをしているピアノでも
好ましくない設置環境やピアノ自体のコンディションが悪い等により
毎回かなりのお時間を頂くピアノもあります。
お客様がピアノに求めている内容によっても
それを実現するための作業内容が変わってくるので
自ずと作業時間もピアノごとお客様ごとに変わります。
不定期(しばらく調律をしていないピアノ)や
定期でも、これまで他の調律師さんが調律していたピアノを
私が引き継ぐ場合は、お時間を頂くことが多いです。
定期調律と一口に言っても作業内容は人によりまちまちで
大半のピアノが「調律(チューニング)」しかされていない事が多く
「整調」「整音」「修理」といった
調律と同じくらい大切な作業がされていないピアノのなんと多いこと...
これまで「調律」しかされてこなかったピアノを作業する場合
午前中から作業を開始して終わるのが夕方という
いわゆる一日仕事になることも少なくないです。
これだけ作業しても、まだ足りないという事が多いです。
その為、定期的に継続してメンテナンスをするということが非常に重要で
前回の作業の続きを次回、そのまた続きを次回、
という風に継続していくことでピアノの状態は保たれる訳です。
作業をご依頼頂く際は、ぜひお時間に余裕のある日をご指定ください。
お時間さえ頂ければ、時間の許す限りピアノの持ち味を引き出すことに専念出来ますし
ピアノの持っている本来の良いところを出してあげられます。
関連リンク : 調律に来てもらう際に準備しておく事はありますか?
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The author is Masami Watanabe